オールドローズ。

マダム・アルディ

またバラの話かと思われるかもしれないが、今回で家のバラのシーズンも終わるので最後だと思う。

今までにバラを、おそらく30種類以上は育てて来たと思う。

途中、夏の暑さや病気やこがね虫の幼虫に枯らされたり、2回引越しもして前よりも小さなベランダになり、母の家に送ったこともあり、今は9種類のバラしか残っていない。

様々なバラを育てて思うことは、僕はやはりオールドローズと呼ばれる古くからあるバラの原種の形や色を留めたバラが好きなのだ。

フェリシテ・パルマンティエ

たとえそのバラが、春の1回きりしか咲かなかったとしても。

代々木公園のバラが先週くらいからやっと見頃を迎えていて、色とりどりの高島屋の包装紙のようなバラが並んでいる。

でもそんなバラを見て、やっと花が咲いたという気持ちはあるものの、「きれいだな」とか、「好きだな」という気持ちは湧いてこない。

そのほとんどのバラは、人間が自分の都合のいいように改良した姿形であり、なんだか造花のような不気味さを秘めている感じがするのだ。

オールドローズの中でも特に僕が好きなものは、一言で言うと、「小学校の学芸会で作ったティッシュのバラ」のような形をしているバラたち。

シャポー・ド・ナポレオン

葉っぱの色が青みがかっていたり、マットだったり、花は奔放で野趣に富み、他のクレマチスやビオラなどの花と一緒にあってもきちんと調和する色と形。

それに比べると現代の改良を重ねたバラは、「あたし、ひとりだけで綺麗でしょ?」といった佇まいなのだ。

そして、何よりも好きなのは、香りのいいバラたち。

その香りは、甘く華やかだけど、どこまでも自然ですっきりとしていて何度嗅いでも飽きることはない。

この時期、朝起きてバラの香りを嗅ぎ、水をあげながら嗅ぎ、夕方また様子を見ながら咲き始めたバラの香りを嗅ぐ。

なんという贅沢な時間だろうか。

新宿御苑の脇の道。

コロナの影響で、新宿御苑は3月末からずっと閉園している。

公園は問題ないという国の見解もあるので、都内のこういう大きな公園こそ、早く開放したらいいのにと思うのだけど、御苑は環境庁の管轄らしく、すぐには開放に至らないのかもしれない。

新宿御苑には、新宿通りと並行に、新宿御苑の中に面した歩道があって、そこは朝から夕方まで開放している。ほんの数百メートルの道なのだけど、御苑の大きな木が生えているのと、小さな小川が流れていて、そこに生えている様々な植物たちを見ることができる。

セリ
ふき
エビネ

コロナのせいで、東京から近郊へ出かけられない状態が長く続いている。そんな状況の中で僕たちは、ちょっとした自然と触れ合いたいと思うようだ。

代々木公園に人々が集まるのは、そういった人間の本能的なものだと思うし、こうした新宿御苑の自然に触れて深呼吸するだけでも、ほんのひととき気持ちが和らぐものだ。

CIBI


北参道の駅のすぐ近く、スーパーのOKの斜め前に、『CIBI』という小さなカフェがオープンした。

カフェと言うか、焼いたケーキも扱っていて、雑貨も少し並んでいる。前々からお店の準備が始まっている時に、今度はどんな店ができるのだろう?と思っていたのだけど、かわいいお店が出来上がった。

コロナの最中にオープンして大丈夫なのだろうか?と思っていたけど、OKにくるお客さんたちが気づいて寄っていたり、結構盛況な感じだ。

店内で物色していると、急にバブル時代の荻野目洋子の曲がかかり、店員さんが大慌てになって、「この曲は、オーナーが嫌がらせで紛れ込ませたんです」と言い訳をしていた。

お店の中の人もとても感じがよく、買って帰ったパウンドケーキも美味しかった。

⭐️CIBIhttps://www.cibi.jp

白いバラ。

我が家には、白いバラが4種類あるのだけど、同じ白いバラと言ってもそれぞれに違いがあることがわかる。


咲き出しは遅いが、最も気品があり芳しい香りの『マダム・アルディー』。オールドローズの中でも、本場イギリスでは常に上位の人気を誇る名花。


我が家ではいつも一番初めに咲くオールドローズで、しなやかな枝と少し奔放な花の形、レモンを思わせる爽やかな香りの『マダム・アルフレッド・キャリエール』。このバラは、一生手放したくないバラ。


ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』に描かれたバラとされる、オールドローズの『アルバ・セミプレナ』は、二重のような花で野生のバラのような野趣があり野ばらのような香り。


『アイスバーグ』は、北側でも沢山の蕾をつけてくれる優秀なバラで、初心者にはおすすめの強健種。秋にも繰り返し咲くのと、冬になると少し桃色を帯びてくる花も美しい。

今年は、4月が例年にない涼しい月だったようで、5月になってもその寒さが朝晩に残り、バラにとっては絶好の気候が続いている。

おかげで家のバラは、例年よりも美しく、長く、その姿を僕たちに披露してくれている。

25年ぶりの電話。

午後のテレカンが終わり夕方、スーパーで買い物をしていると、会社の電話がなった。

「Iです。元気にしてる?」

久しぶりに驚いた声の主は、もうかれこれ25年前に退社した僕の上司のIさんだった。

Iさんは、僕の面接官であり、配属もIさんの下で、当時54歳のIさんを、僕は自分の父のように慕っていたのだった。

Iさんは55歳で退職して、韓国の会社の役員のようなポジションになったと聞いていた。

年に一度、年賀状のやりとりをしていたが、僕の引っ越しや喪中でいつの間にかIさんとの連絡は途絶えてしまい、その後、引退してからは長野県の八ヶ岳に家を構えていると風の便りに聞いていた。

「なんで電話したかわかる?」

「いや、わかりません。お元気でしたか?」

「会いたいねえ…」

「コロナが落ち着いたら会いに行きます」

「実はね…
君が家に遊びに来た時に持ってきてくれたクレマチスがあったでしょう?
あれを挿木をして地植えにしてたのは知ってるよね?
あのクレマチス、引っ越すたびに持って行ってて、今、一輪目が咲き出したところ。君に電話しようと思ったんだ」

「あんな、25年も前のクレマチスがまだ生きてたんですか?びっくり!うれしいなあ!」

その後、スマホにクレマチスの写真が送られて来たのだけど、それは紛れもなく僕が持って行った濃い紫のクレマチスで、写真を見た瞬間に過ぎ去った時間が蘇った。

Iさんとのメールのやり取りで、奥様は3年前の夏に癌で亡くなられたことを知った。今は八王子で一人暮らしをしているという。

僕が家で咲いたバラの写真をいくつも送ると、八ヶ岳にいた時は40本もバラを育てていたのだけど、今は4本だけ選んで育てているとのこと。

80歳になったIさんが、クレマチスの花を見て僕を思い出し、電話をくれたことをありがたく思った。

若い頃は、人生なんて永遠に続く気がしていたし、出会う人も無限にいて、会えなくなってしまった人のことも、またどこかで会えるような気がしていた。

でも今思うことは、人生には終わりがあり、人との出会いは永遠に続くものではなく、いつか必ず会えなくなってしまう時が来るということ。

コロナの騒ぎが落ち着いたら、必ず八王子にIさんを尋ねて行こうと思ったのだった。

焼きそば。


Kがお好み焼きやたこ焼きを進んで作ってくれることは、以前ここに書いた。

そんな日は、僕が食事の準備をしなくてよいため、あまりにも楽ちんで、こんな日がもっと増えたらいいのに…と密かに思っていたのだ。

そしたら今度は、焼きそばを作ってくれるというので、準備を脇で手伝って見ていたら、僕が作るよりも美味しく出来上がった。

焼きそばを作るのは、意外と難しい。

焼きそばの袋に書いてある通りに作ると、「途中でお水を90cc入れろ」などと書いてあるが、これが曲者で出来上がりがベチャッとしたドロドロした焼きそばになってしまうものだ。

結論としては、焼きそばに、水分は必要ないようだ。野菜から水分は出てくるので、それを利用して美味しい焼きそばを作ろう。

〈焼きそばの材料〉
焼きそば 豚肉 キャベツ もやし ニラ 適量

〈焼きそばの作り方〉
1. フライパンを中火で熱して熱くなったら油を引き、そばを入れる。そのまま放って少ししたらほぐれやすくなるので軽くほぐして焼け目をつけ、ざっくり裏返し反対側も焼け目をつけて、一旦取り出す。

2. 軽く塩胡椒した豚肉を油を少し引き直したフライパンに入れ、片面焼いてひっくり返したら、その上にキャベツと天かす(もやしやニラなど好きな素材)を乗せる。

3. その上に、1のそばを載せて、少し弱火にして2・3分くらい蒸すように焼く。

4. ソースを鍋肌から適量かけて、全体をざっくり混ぜる。この時ソースは、少し少なめかな?というくらいにしておいて、全体の色を見ながら調整する。

5. ソースの水分が軽く飛んだらお皿に盛り付ける。あまりここで焼かないこと。(ソースが焦げ付くため)青のりや鰹節を振って完成。

シークレット・ラブ 65年後のカミングアウト


Netflixオリジナルのドキュメンタリー作品『シークレット・ラブ 65年後のカミングアウト』は、65年間家族のように暮らしながら、親戚や周りにカミングアウトできずに生きてきた二人のレズビアンカップルのお話。レズビアンの話だけど、ゲイである僕も完全に感情移入できた素晴らしい作品。

1940、50、60、70、80、90年代、アメリカではまだまだ同性愛ということを公表するなどあり得ないことだったようで、周りには自分たちは家賃がやすくなるからとか、実は親戚なのだと言いながら、ずっと二人の関係をひた隠しにしながら生きてきたテリーとパット。

二人は、次第に年をとり、テリーの病変が見つかったこともあり、娘のように育ててきた姪にカミングアウトすることに。そしてそこから、二人の生活は少しずつ変わっていく。

もしも今までに、『愛』なんて見たこともないし、聞いたこともないと思っている人がいたら、このドキュメンタリーを見ることをお勧めする。

ここに描かれているのは、紛れもない『愛』だ。

二人が自分たちのことをひた隠しにしながら生きていることを知る手紙が出てくるのだけど、ここで僕はたまらなく泣いてしまった。

若い頃のはち切れそうな二人の映像や写真が、彼女たちの人生がいかに輝いていたかを雄弁に物語っているが、年老いてゆくふたりの生き様も美しい。

あっぱれ。ライアン・マーフィー。

⭐️シークレット・ラブ 65年後のカミングアウトhttps://www.netflix.com/jp/title/80209024

セカンドライフ。

こんな風に、どこにも旅行に行かず、映画館にも行かず、レストランにも行かず、ゲイバーにも行かず、ほとんど誰にも会うことなくKと二人、家族だけで毎日過ごしている生活を、はじめは不思議に感じていたものの、僕たちは次第にそんな毎日を楽しむようになってきた。

朝は、今まで通り6時頃には目が覚めて、洗濯をして、朝ごはんを作り、バラや植物にお水をあげて、朝ごはんを食べてから8時頃には散歩に出かける。

散歩は、晴れていれば代々木公園をまずは目指して、その後に渋谷へ出るか、表参道に行くか、その日の気分によってコースを選び、だいたい5キロから10キロ歩いて、10時から11時くらいには家に戻ってくる。

家に帰るとニュースやメールをチェックして、少ししたらランチの用意をする。二人でワインを飲みながらランチをして、その後、Netflixやamazonで映画やテレビドラマを見る。

眠くなったら二人でソファの上で昼寝をして、しばらくしてまた散歩に出かける。17時過ぎくらいまでが日没前でも美しい時間なので、16時くらいには家を出るのだ。ここでだいたい5キロくらい歩く。

帰ってきたら家にあるもので夕飯の支度にとりかかる。その間Kは有酸素運動をしていて、レモンサワーかワインを飲みながら二人で晩ごはんを食べる。

その後、Netflixのテレビドラマなんかを見て、眠くなってきたらシャワーを浴びて寝室に行く。

今年のゴールデンウイークはだいたいこんな毎日の繰り返しで、僕はいつのまにかセカンドライフを生きているような気分になっている。これはもしかしたら、僕たちが海の見える田舎に暮らし始めたら、こんな毎日になるのかなあと思ったりするのだ。

できればこれに、社会のためになるような活動が入れば、なかなか楽しい暮らしだとも言える。

ぶどうの葉。


我が家のベランダには、ぶどうの木が二株あって、春から夏にかけて旺盛に生茂る。

下の階に枝を伸ばしはじめていたぶどうの枝を切っていたら、Kが、「かわいそう!」と言ったので、あまり切らずに作業をやめた。

切ったぶどうの枝は、下田の酒屋で買った徳利に入れて飾ってみた。

一本の枝だけで、どうしてこんなに美しいのだろう。

HOLLYWOOD


第二次世界大戦後のハリウッドで、アメリカンドリームを夢見る俳優・女優・監督・脚本家・プロデューサーらが、なんとか映画界の中で這い上がろうともがく物語。

前回ここにも書いた『ポーズPOSE』も素晴らしかったけど、こちらの『ハリウッド』もNetflixオリジナルのドラマ。

そして、どちらも今や飛ぶ鳥落とす勢いのヒットメーカーであるライアン・マーフィーが手掛けている。なんでも、Netflixとの年契は300億円だとか。

この『ハリウッド』。見始めたらまたどんどん引き込まれていく魅力のある作りで、出てくる人たちも、コール・ポーター、ヴィヴィアン・リー、ロック・ハドソンなど、誰もが知っている時の人ばかりなのだ。

この『ハリウッド』は、特にゲイものではないのだけど、ハリウッドという特殊な世界の舞台裏の話なので、そこには複雑にゲイが絡んでいるし、彼らがいかに日陰の存在であったのかがわかる。

第二次世界大戦後のアメリカでは、未だに黒人に対する人種差別が厳然と残っているところも考えさせられるテーマのひとつだろう。

間も無くシーズン1を見終えてしまいそうだけど、シーズン2が早くも楽しみなドラマだ。

⭐️ハリウッドhttps://www.netflix.com/jp/title/81088617