SIMONE

この夕暮れのビーチに行きたい…

僕が高校生の頃、大学生だった兄は一人暮らしをしていて、休みのたびにスペインやポルトガル、そして南アメリカに旅行に行っていた。
旅行と言っても、2ヶ月くらい行ったきり戻らないので、その期間僕が兄の家に行ってちょっとの間一人暮らしの気ままさを味わったりしていた。
その頃、よくひとりで悦に行って部屋で聴いていたのが、このSIMONE(シモーネ)のアルバム 『VICIOhttp://youtu.be/yvjKX69ByO0』。このアルバムをはじめて聴いたときに驚いた。
「この声、男なの?女なの?」
 
目をつぶって聴いていると、男のようでもあり、女のようでもある不思議な太い声に魅了された。
SIMONEに限らず、僕はたとえば、『カエターノ・ヴェローゾ』も、男性なのか女性なのかわからないような魅惑的な声の持ち主だ。僕はこんな男性とも女性ともわからない不思議な声がもともと好きなのかもしれない。(カエターノのことはまた後日書きますね)
このアルバムの最初の曲『eu sei que vou te amar(あなたを愛してしまう)』は、トムとヴィニシウスによる大好きな曲で、2曲目に繋がる美しい流れを聴いていると、裏ジャケットにあるSIMONEが佇む、まだ行ったことのないブラジルの夕暮れ時のビーチを想像させる。
来年は、アルゼンチンに行くことができそうなので、そのついでに念願のブラジルにも行けたらいいなあ・・・。

HENRI SALVADOR

暑い暑いと思っていたら、7月23日は『大暑』だそうだ。一年で一番暑い時期なのだから無理もあるまい。
いつも会社に着替えを持って行くのだけど、会社に着く頃にはシャツは既に汗ばんでいる。
青空に高層ビルを見上げながら、一番暑い時期は、フランス人のように1カ月くらいヴァカンスを取れたらいいのに…と思う。
こんな暑い時期、僕は、『アンリ・サルヴァドール』を聴いている。
アンリ・サルヴァドールは、7年前に90歳で亡くなってしまったフランス人のミュージシャン(正確に言うと、フランス領ギアナ出身)。ジャズを学び、ブルースをこなし、42年にボサノヴァに出会い数々のアーティストに影響を与える。
若い頃の歌声も素晴らしいけれども、82歳の頃出されたアルバム『chambre avec vue』は、アンリのフランス語が心地よい素晴らしいアルバムだ。
荒れ果てて、しわがれたような、それでいてやさしく撫でるような、人を包み込むような歌声を聴いていると、歌って、別に完璧な声を出さなくても魅力的なのだと思わされる。
そしてこのアルバムを聴いていると、なぜだか無性に旅に出たくなるのだ。
ブルゴーニュからコート・デュ・ローヌをワインを飲みながら巡り、コートダジュールへ。地中海の小さな町で、ピカソの美術館なんかを見ながら、のんびり美味しいものを食べ歩く…。
海を見ながらのんびり過ごす夏は、どんなに暑くても幸福に違いない。
★J’AI VUhttp://youtu.be/VOQQ98u3D0k

Bette Midler 4

帰国して、ニューヨークで観たベット・ミドラーのライブを思い出している。
後半の、『The Rose』からは、ずっと泣いていた気がする…
今回のライブで、一番心打たれたのはこの曲。
『Stay With Me』http://youtu.be/MF5r2BW2jC8
この頃は、ただの気狂い女に見えるけど…
ベット・ミドラーの映画で、最高の一本は、『The Rose』だろう。
壊れてしまうんじゃないかっていうようなベット・ミドラーが、たまらなく愛おしく思える。
今年70歳になるベット・ミドラー。
またライブがあったら、たとえどんなに遠くても、飛んでいきたいな。

Bette Midler 3

僕が、生きている間に絶対に見たいと思っていたものの一つが、『ベット・ミドラーのコンサート』だ。それが、今回のニューヨークでMのおかげで急に実現したのだ。M、ありがとう!
マディソンスクエアで行われたコンサートは、3万人以上の人が詰めかけていた。でも、駅を降りて列に並ぶとなんだか普通のコンサートとは様子が違っている…
なんというか…みんないわゆる『おばちゃん』ばかりなのだ。それも、ベット・ミドラーそのものみたいな典型的なアメリカ人のおばちゃんがゴロゴロいる。
そして男性は、まず間違いなくゲイだ。(奥さんにしようがなく連れてこられた旦那さんがほんの少しいるくらいだろうか)
今年70歳になるというベット・ミドラーのコンサートは、一言で言うと、『完璧』だった。
下ネタも沢山交えながらのトークで笑わせられ、情感たっぷりで深みのある歌声で心を鷲掴みにされた。
加齢とともに少し高音域が出なくなったのは感じられるが、そんなことはもはやどうでもよくて、完璧なプロフェッショナルなステージだったのだ。
この日、アメリカでは全州において『同性婚』が認められるという歴史的な判決がくだされた。いつもゲイの味方だったベット・ミドラーは、このニュースにも触れ、みんなから大喝采を浴びていたし、僕たちの前には、二人の大げさな格好をしたドラァグクィーンが喜びをあらわに絶叫していた。
最後に、彼女の曲の中でも最も好きな曲が連続で演奏された。その曲は、自分の人生で出会い、ともに生き、今はもう居なくなってしまった人たちに捧げられていた。
彼女の語りと歌声を聴きながら、抑えることの出来ない涙がとめどなく流れた。
それは、悲しみではなく、途方もない喪失感だった。
そして、そんなことを全部知っているかのように、ベット・ミドラーはそっと触れ、僕を温かく包みこんだのだった。

OASIS

ROBERTA FLACKがこのアルバムを出したのは27年前。
その頃、週末に2丁目に遊びに来てはZIPに遊びに行くというのがみんなのお決まりのコースで、オーナーであるミッキーは僕が15歳くらいの頃から知っていた。
ミッキーは、二丁目で一番流行った店と言われるZIPの後、ARTY FARTYという少し年上を狙った店をオープンさせて、2丁目のムーブメントを築き上げて来た人だった。
そんなミッキーが今年の初めに亡くなったことを人づてに聞いて、ミッキーを懐かしく思い出していた。
このアルバムが出た当初、ミッキーとも話題にしたもので、ミッキーがOASISの発音を英語風にオエィスィスという感じに得意げに話していたのを覚えている。
このアルバムは僕にとっては衝撃的で、アフリカの乾いた大地を思わせるサウンドに鳥肌が立ったものだ。
ROBERTA FLACKの有名な曲は”killing me softly with his song”など沢山あるけど、4年前くらいだろうか、ニューヨークでライブに行った時に、彼女のプロ意識に改めて感動したものだ。
それは、どの曲であってもライブであるという雑さが全く感じられず、完璧なパフォーマンスだったから。
今日はなぜだか、ふとミッキーを思い出して、”OASIS”をかけてみた。
はじめから最後までほとんどサビのような曲は、今聴いても強く心に訴えかけてくる。アルバム全体を貫くアフリカ色の濃さは、まだ見ぬ大地を想像させてくれる。
ミッキーもきっと、2丁目のことも忘れて今頃はOASISにいるのかもしれない。
★OASIShttps://m.youtube.com/watch?v=1rJY06otS0k

WOODY ALLEN’S MOVIES

なにかにつけ、ふと聴きたくなるアルバムがある。
ウディ・アレンの映画の音楽を修めたこのアルバムを、かれこれ27年くらい聴いているだろうか?
映画『インテリア』『マンハッタン』『ハンナとその姉妹』などから抜粋された音楽は、百回以上聴いても飽きることがない。
僕はそんなに保守的な人間ではないと思っているけど、特に音楽に関しては、これから先にどんどん新しいヒット曲を追いかけようという意識が薄いのかもしれない。
家で赤ワインを開けて、料理を作りながら、ウディ・アレンの映画音楽が流れている・・・
こんなに心地いい時間が他にあるだろうか。
★I’ve heard that song beforehttps://www.youtube.com/watch?v=tX5S9iXmMek

ENNIO MORRICONE

早春のまだ寒く晴れ渡った朝に、エンニオ・モリコーネの曲をかけてみる。
一番有名な曲は、『ニュー・シネマ・パラダイス』だろうか。映画の内容よりも、モリコーネの曲によって泣かされていたことに、今になって気づく。
高校の頃、友人たちと観に行った『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。銀幕の美しい世界に息を飲んだ。
あれから30年経った今こうして曲を聴くと、この映画を支えていたエンニオ・モリコーネの力を思い知る。
美しいものを残した人は、死なない。
★DEBORAH’S THEME from once upon a time in americahttp://youtu.be/PuyYc0gINbU

Bette Midler 2

憧れのベット・ミドラーのコンサートに行くことを、映画『フォーエバー・フレンズ(原題Beaches)』を観て以来、僕は26年間ずっと夢見て来ました。
数年前には友人Mが、ラスベガスで彼女のショーを観て素晴らしかったと言うので、羨ましいなあ〜と思いながらパンフレットを眺めていました。
彼女は(ハワイ出身が関係あるのかわからないけど)日本嫌いらしく、日本にはまず来ないだろうと言われていたし、もう生きているうちは無理かも…とほとんど諦めかけていたのです。
それがたまたま、この夏ニューヨークでコンサートをやるらしく、これまたMが自分の分と合わせてコンサートのチケットを取ってくれたのでした。
もともと、昨年末に行ったカナダに魅了されて、この夏もう一度カナダに行こうと思っていたので、これはもう神様の思し召し…。自分の仕事がその時期どうなるのか…という不安はあるものの、6月に久しぶりにニューヨークに行くことにしましたー!
★IN MY LIFEhttp://youtu.be/JeuxV_PzR_s
★Bette Midler(その1)http://jingumae.petit.cc/banana/2189237

Both Sides Now

この曲を聴きながら読んでくださいhttp://youtu.be/BzYgBad_698
トロントとオタワでは、日本人のミッキーさんというコーディネイターの方にお世話になった。
ミッキーさんはワーホリでカナダに来て、そのままカナダに住み着いてしまったようで、今は54歳くらい。
顔がネズミに似ているからMickeyと仇名をつけられたようだ。ミッキーさんはとても真面目で控えめな方で、僕たちが何を欲しているのか、一緒の時は常に気を張り巡らしてくれた。
オタワでミッキーさんと別れる時に、「これは私からのプレゼントです」と言ってCDを2枚いただいた。
CDは、ミッキーさんが好きなJAZZを、ヴォーカルのみのものと楽器だけのものとそれぞれ別々に編集してあるものだとおっしゃった。
東京に帰って来て慌ただしい毎日の中、あっという間にまた週末が来て僕は九州へ向かい、クリスマスの直前にやっと家に帰って来ることが出来た。
一人で家で料理をしながらワインを開けた時に、ふとミッキーさんがくれたCDのことを思い出して、資料の中から探し出してかけてみた。
すると、宝石のように美しい音楽が部屋に溢れ出した。
『Both Sides Now』は、ジョニ・ミッチェルの曲だけど、歌詞がまた秀逸だ。
素晴らしい音楽を聴くと、生きていることに感謝したくなる。

“Duets” FRANK SINATRA

フランク・シナトラのデュエットアルバム『Duets』は、1993年に出たアルバム。
デュエットをしている錚々たるメンバーを見たらわかるように、シナトラの晩年のアルバムの中でも特に印象的なものだ。
20年前の僕は、仕事に恋に遊びに没頭していて、よくこのアルバムを聴いていたのを覚えている。
ルーサー・ヴァンドロスとの豪華な『The Lady Is A Tramp』から始まり、アレサ・フランクリンの軽やかな『What Now My Love』、そして、バーブラ・ストライザンドとの熱いかけ合い『 I’ve Got A Crush On You』に流れてゆく・・・。
クリスマスが近づいてくるこの季節に、華やかに気分を盛り上げてくれる1枚。
『DUETS』
1. The Lady Is A Tramp (with Luther Vandross)
2. What Now My Love (with Aretha Franklin)
3. I’ve Got A Crush On You (with Barbra Streisand)
4. Summer Wind (with Julio Iglesias)
5. Come Rain Or Come Shine (with Gloria Estefan)
6. New York, New York (with Tony Bennett)
7. They Can’t Take That Away From Me (with Natalie Cole)
8. You Make Me Feel So Young (with Charles Aznavour)
9. Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry / In The Wee Small Hours Of The Morning (with Carly Simon)
10. I’ve Got The World On A String (with Liza Minnelli)
11. Witchcraft (with Anita Baker)
12. I’ve Got You Under My Skin (with Bono)
13. All The Way / One For My Baby (And One More For The Road) (with Kenny G)