Swedish Beauty for Spice of Life

冷たい雨の帰り道、急に寒くなったなあ・・・と思いながら、家に着いて、冷蔵庫からブリーチーズを出して赤ワインをそそぐ・・・。
こんな日に、家に大型犬がいて、恋人がいて、暖炉があれば言うことないのになあ・・・
と思いながらこのアルバムを。『Swedish Beauty for Spice of Life』は、橋本徹さんの『アプレミディ』から出ている、スウェーデンジャズの女性ヴォーカルを集めたもの。
不思議なことにこのアルバム、寒くなってくると聴きたくなる何かがある。それは、スウェーデンのどこまでも透き通った女性ヴォーカルがそう思わせるのか、アルバムの終わりの頃のスウェーデン語の音の心地よさなのか、はたまた、熟女のしわがれた『what a difference a day made』なのかはわからない。
何十回となく料理を作りながら、本を読みながら、ソファでワインを飲みながら聴いていても飽きることはなく、寒い夜に心地よい人のぬくもりを感じさせるこのアルバムを、この冬もまた、何度となく聴くことになりそうだ。
★http://spiceoflife.shop-pro.jp/?pid=25836694

Lalah Hathaway

偉大なDonny Hathawayの娘、Lalah Hathawayは、僕の最も好きな女性歌手のうちの一人だ。
(このブログは毎日書いているので、すでにレイラ・ハザウェイのことには触れたことがあるかもしれない。重複していたらお許しいただきたい)
1990年に出した『Lalah Hathaway』という衝撃的なデビューアルバムから9年後に、Joe Sampleと組んで『The Song Lives On with Joe Sample』というアルバムを出した。
ダニー・ハザウェイの娘というだけあって、レイラ・ハザウェイの歌声は、他の誰にも似ていない複雑な音が一つになったような独特な声であり、どこまでも伸びやかだ。それでいて歌声の根底に何か温かいものを秘めているように感じられる。
僕は、その頃つきあっていた人とブルーノートのライブに行き、彼女のバイブレーションの中に包まれた至福の時間を、今でもそっくりそのまま思い出すことが出来る。
有名な『Street Life』から始まるこの『The Song Lives On with Joe Samplehttp://www.amazon.co.jp/Song-Live-Joe-Sample/dp/B00000ILY5』は、今でも静かな夜にワインを傾けながら聴きたくなる珠玉の一枚だ。
★when your life was low https://www.youtube.com/watch?v=g3LIMYjzXlA
★night and day https://www.youtube.com/watch?v=fvzl7CCeo0c

Omara Poltuondo

先月に福岡の『酒陶 築地』にお邪魔した時に、店で流れていた曲が気になってCDを見て取り寄せたのが『Omara Poltuondo』。ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブによるもの。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブは、キューバの老人ミュージシャンたちの集まりで、ヴィム・ヴェンダースによる素晴らしいドキュメンタリー映画でも有名。
このCDの中のオマラお婆さんがいったいいくつなのかはわからないけど、この枯れたような歌声は、キューバの音楽だからか、この暑い真夏にもぴったり合っていて、部屋で何度かけていても邪魔にならずに心地よい。
カリブ海の島『セントルシア』に行ったことはあるけど、キューバにはまだ行ったことはない。
いつかキューバに行って、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの曲を生で聴いてみたい。
★Omara Poltuondo『canta lo sentimental』http://m.youtube.com/watch?v=Ixy7-JO9KTM

Bette Midler 1

ベット・ミドラーが好きだ。
若い時にはお金がなく、ニューヨークのゲイのバスハウスで歌っていたらしい。
時々彼女の歌声を聞きたくなるのは、人生で底辺を味わった人が持つ、強さとやさしさを感じるからかもしれない。
好きな曲は沢山あるけど、シナトラで有名なこの曲は、テレビ番組のライブで歌ったとは思えない深みのある歌声だ。

歌い終って彼女が立ち上がると、その衣装を見ただけで大笑いしてしまう…
いつか、ベット・ミドラーのライブに行くことは、僕の夢なのです。
One For My Baby (And One More For The Road)
It’s quarter to three
there’s no one in the place except you and me
So set’em up, Joe
I’ve got a little story you ought to know
We’re drinking, my friend
to the end of a brief episode
Make it one for my baby and one more for the road
I got the routine
so drop onother nickel in the machine
I’m feelin’ so bad
I wish you’d make the music dreamy and sad
Could tell you a lot
but you’ve got to be true to your code
Make it one for my baby and one more for the road
You’d never know it
but Buddy, I’m a kind of poet
and I’ve gotta lot of things to say
And when I’m gloomy
you simply gotta listen to me
until it’s talked away
Well that’s how it goes
and Joe, I know you’re getting anxious to close
So, thanks for the cheer
I hope you didn’t mind my bending your ear
This torch that I’ve found
must be drowned or it soon might explode
Make it one for my baby and one more for the road
That long long road
あの子のために一杯(そして旅路のためにもう一杯)
3時15分前だ
店には君と俺しかいない
もう片付けてしまえよ
ちょっと話したいこともあるんだ
短いエピソードを語り終えるまで
一緒に飲もうじゃないか
作ってくれよ 俺のベイビーのために一杯
そして 腰をあげるためにもう一杯
いつもの習慣なんだよ
ジュークボックスに硬貨を落してくれ
ひどい気分だから
なにか哀しい唄にしてくれないか
話はいろいろあるんだが
でも秘密は守らないといけないぜ
作ってくれ あの子のために一杯
そして 旅立つためにもう一杯
君は知らないだろうが
俺は一種の詩人でね
語ることはたくさんあるんだ
で、俺が憂鬱でいるときは
ただ聞き役でいてくれ
話が全部終わるまで
まあ そういう具合なんだ ところでジョー
閉店の時間が気になるようだな
慰めてくれてありがとう
聞き役にさせて悪かったね
俺の松明は 早めに消しておかないと
爆発しそうだったんだ
さて 一杯作ってくれ 
俺のベイビーのために
そしてもう一杯
これからの長い長い旅路のために
Johnny Mercer
Harold Arlen

雪の日に聴く音楽。

東京は先週に引き続き、大雪の週末を迎えた。外苑の樹々は雪化粧に覆われ、まるで北欧かどこか別の国に来てしまったように美しい。
雪がしんしんと降る日には、部屋で無音で過ごすのが一番だろう。雪の降る静けさ、その非日常こそが贅沢だと思えるから。でもあえて音楽を聴くとすると、どんな音楽を聴こうか?
僕は今日、バッハを選んだ。
パブロ・カザルスのこのアルバムは、僕がまだ大学生の頃に出会った。ニューヨークが好きで何度も行っている時に、年末の寒い日に、ふと地下鉄の乗り換えで歩いている時に、無心でチェロを弾くお爺さんがいた。
上手いとか下手とかではなく、一心不乱に弾くバッハを聴きながら僕は彼の演奏に魅了されて、この人はいったいどんな人生を送ってきたのだろうか…?と考えた。
その後、何度か同じ乗り換えでその道を通ったけど、そのお爺さんには二度と会うことは無かった。
ニューヨーク滞在中(その頃はよく3週間くらい滞在していた)に、お爺さんが弾いていたバッハの曲を聴きたくなり、ニューヨークのヴィレッジの辺りのCDショップでこのアルバムを買い求めた。カザルスを選んでくれたのは、眼鏡をかけた髪の長い怪しいお兄ちゃんだった。(カザルスは、『私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は、PEACE、PEACEと鳴くのです』という言葉を遺して、『鳥の歌』を国連で演奏したことも有名)
降りしきる雪には、バッハが似合う。
ニューヨークのSOHOのカーストアイアンの建築物にも、バッハが似合う。

ニーナ・シモンに会いに。

このアルバムではないのだけど…

ビフォア三部作のうちで、映画として完成度が高いのは『ミッドナイト』だけど、僕にとって心奪われたエンディングは、『サンセット』かもしれない。
映画の中で、ニーナ・シモンの、『Just In Time』のパリでのライブバージョンがかかるのだけど、素晴らしい曲と歌詞の内容とがあいまって鳥肌が立ち、胸を鷲掴みにされた。
僕が持ってる Just In Time http://m.youtube.com/watch?v=RhqOHFUYtzI は、ニューヨークのVillage Gateでのライブバージョンだけど、間奏のピアノの珠玉の美しさとニーナ・シモンの奔放な歌声が忘れられない。
僕が学生の時、二丁目の『ぺんぺん草』のマスターのひろしさんが旅行に行く時にいつも、ひろしさんの代わりにボランティアで『ぺんぺん草』に入ることがよくあったのだけど、僕以外にはオープン当時からのお客さんの二人以外には入ることが許されなかった。
若い僕がなぜ許されたのかはわからないけれども、ひろしさん曰く、「お前だったら恐いから、誰が来ても大丈夫」ということだった…
その頃、バリ島なんかに1ヶ月近く旅行に行ってしまうひろしさんを懐かしく思うと、いつもお店でニーナ・シモンのアルバムを出しておいた。
他のアルバムはそうでもないのだけど、そのアルバムのニーナ・シモンは、坊主頭で、驚くほどひろしさんにそっくりだったのだ…。
ひろしさんがいないことを知らずに入って来てしまったお客さんにもそのアルバムを見せると、笑って一杯飲んで行ってくれたのを懐かしく思い出す。
そんなことを思い出しながら、久しぶりに『ぺんぺん草』を覗いた。
席に着くなり、「弱いのちょうだい!ニーナ・シモン!」と言ったら、ひろしさんが大笑いした。
「あのアルバム、いったいどこ行ったかしら…」なんて言いながら、昔のくだらない話を沢山した。

I get along without you very well

家で料理をしながらNina Simoneのアルバムを聴いていたら、『I get along without you very well http://www.youtube.com/watch?v=_22tXp1g44U』が流れてきたので、久しぶりにつくづく美しい曲だなあ・・・とじんわりと胸に沁みいった。
この曲はHoagy Carmichael(1899-1981)が作ったもので、Hoagy Carmichaelは『Star Dust』『Georgia On My Mind』などで有名な作曲家。作詞もHoagy Carmichaelになっているけど、これは他の人の作詞ということだ。
歌詞は、「あなたがいなくても、生きていけるわ・・・」と言った、恋愛に破れた人の歌なのだけど、言葉の選び方や優しい言い回しがせつなすぎる。
曲自体は、Chet Bakerのバージョンhttp://www.youtube.com/watch?v=IgbPHTBiAVQがとても有名だけど、僕はこの、Nina Simoneの繊細なピアノと、壊れそうなヴォーカルが好きだ。(この曲が入っている『Nina Simone and Piano!』というアルバムも素晴らしい)
「春が来たら…心が二つに引き裂かれてしまいそう・・・」と歌うNina Simoneのこの曲のピアノの終わり方は、奇跡的な美しさをたたえている。

Patti Austin

シーラカンスみたい…

僕にとって一番贅沢な週末は、今週末のようになんにも予定を入れない週末だ。
会社に入りたての忙しい時に、二つ年上の人とつきあいかけたことがあり、その彼から当時彼の好きなCDを2枚もらった。 それらは20年近く経った今、僕の宝物のようになっていて、時々思い返しては聴き続けている。
今日のような初冬の曇りがちな日に、一人で家でのんびりと読書や料理などをしながら、『Patti Austin』を聴いていると、彼女の抑えた歌い方が胸に沁み入って来る。
Patti Austinは、僕の周りではあまり話題に登るシンガーではなかったけど、時代に残るヴォーカルがあるとしたら彼女のような人なのではないかと思わせるちょっと複雑な歌声だ。
Quincy Jonesという天才に見出され、多くは無いけれども着実にアルバムを重ねて来たPatti Austinは、YouTubeで見る限りライブも見応えがありそうだし、日本のブルーノートにも来ているようなので、いつか機会があったら、是非ライブを観てみたいと思う。
昔は好きなアルバムを恋人に送ったりしていたけど、今はダウンロードして交換したりするのだろうか?
僕は、CDという形になっているアルバムが、ジャケットも含めて作り手の思いが込められている気がするしとても好きだ。これからたとえ20年経ったとしても、大好きなCDは変わらないのだろうと思う。
★How do you keep the music playing?http://www.youtube.com/watch?v=Y-4Nc84uEK8&playnext=1&list=AL94UKMTqg-9B94TIWGtiWh09qpTj3ncmk

ブラジルの水彩画。

明日は大事なプレゼンが控えているので、朝10時から企画を持ち寄り打ち合わせをするはずが、入社以来一緒に働いて来た後輩のIから、プライベートのスマホに夜中にメールが来た。
「体調と精神的にも調子が悪いので、明日の朝の打ち合わせ。行けないかもしれません」
僕は、困ったなぁと思いながらも、それでも、こんなメールを夜中に送ってくるのは、よほどのことなのだろうと思い、「大丈夫だよ。ゆっくり休んでください。朝は僕がまとめておくから、夕方打ち合わせをしよう」と送った。
僕も、今回の案件では、ほとほと疲れていて、その日もほぼ眠れずに考えて朝を迎えた。タクシーで会社に行き、一人でアイデアをまとめていると、Iからメールが入った。
「今朝はありがとうございました。おかげさまで、だいぶんよくなりました。夕方、プレゼンが終わったら、ご連絡します」
心は毎瞬、膨らんだり、しぼんだりを繰り返している。目の前で何か出来事が起こると、それをどう捉えるかによって、自分の心も反応するものだ。高揚して胸がはじけそうな時もあるし、時には傷つくこともある。
Iが、疲れて挫けそうになったように、僕だって挫けそうになることもある。この世界には、完璧な人などいないのだ。
夕方の打ち合わせは、物凄いスピードで片付いて行った。僕も頭が冴えて来たし、Iも冷静になって論理性を取り戻し、新しい提案へとつなげることが出来た。
「こうしなければならない」とか、「こうであらねばならない」などの暗黙の社会人としての掟など関係ないのではないだろうか。他の人と比べる必要もない。我々は生身の人間なのだ。
疲れている日の朝は、大好きな『ブラジルの水彩画 Aquarela do Brasil – João Gilberto, Caetano Veloso e Gilberto Gil http://www.youtube.com/watch?v=-ID-7RyRAHQ』を聴いて出かける。実際の水彩画のことではなく、ブラジルの魅力を唄ったこの曲は様々な人がカバーしているけど、僕はこのバージョンが一番好きだ。
この曲を聴きながら、まだ訪れたことのないブラジルのことを思う。
世界は広い。目の前の問題は、実はそんなに大きなことではないのではないかと思うことが出来たら、その日もなんとかなる。

TWO ROOMS

ニンジンのサラダ

鶏肉の煮込みバスク風

今まで聴いた中で、一番好きなトリビュート・アルバムを挙げるとすると、難しいけど「Two Rooms」だと思う。これは、作曲家のエルトン・ジョンと作詞家のバーニー・トーピンに敬意を表して豪華なアーティストが結集したアルバム。
連休の最後の昼間に、ワイン片手に「鶏肉の煮込みバスク風」を作りながら、久しぶりに「Two Rooms」を聴いていた。このアルバムが発売された頃は、車にいつも乗っていて、車の中でよく聴いていたのを覚えている。
いくつも好きな曲があるのだけど、一番好きな曲を挙げるとすると、Kate Bush 「Rocket Man http://www.youtube.com/watch?v=9b6dO2wouhQ 」だと思う。このバージョンを聴いた時、ケイト・ブッシュのことを天才だと思った。
シニード・オコーナーも、オリータ・アダムスも、ウイルソン・フィリップスも、スティングも、ティナ・ターナーも、本当に素晴らしい。エルトン・ジョンも最近は、同性婚や二人目の養子の話などでばかり話題になるけど、つくづく偉大なアーティストなのだなと思わせてくれる。
☆「鶏肉の煮込みバスク風」は、鶏の骨つきもも肉2本に塩をして半日置き、鍋でオリーブオイルでキツネ色に焼き付け、シェリー酒60mlで蓋をして40分煮込む。その間にフライパンで玉ねぎ半分とニンニク1個のみじん切りを炒め、赤と黄色のパプリカとピーマン各1とトマト4個(もしくはカットした缶詰)に、ブーケガルニ(タイムと月桂樹とパセリの茎)を乗せて煮込み塩胡椒にカイエンヌペッパーで味を整え生ハムを少し投入。最後に鍋に野菜を入れて、その上に鶏肉を乗せて蓋をして更に10分煮込めば完成。うまいよ!