Bette Midler 3

僕が、生きている間に絶対に見たいと思っていたものの一つが、『ベット・ミドラーのコンサート』だ。それが、今回のニューヨークでMのおかげで急に実現したのだ。M、ありがとう!
マディソンスクエアで行われたコンサートは、3万人以上の人が詰めかけていた。でも、駅を降りて列に並ぶとなんだか普通のコンサートとは様子が違っている…
なんというか…みんないわゆる『おばちゃん』ばかりなのだ。それも、ベット・ミドラーそのものみたいな典型的なアメリカ人のおばちゃんがゴロゴロいる。
そして男性は、まず間違いなくゲイだ。(奥さんにしようがなく連れてこられた旦那さんがほんの少しいるくらいだろうか)
今年70歳になるというベット・ミドラーのコンサートは、一言で言うと、『完璧』だった。
下ネタも沢山交えながらのトークで笑わせられ、情感たっぷりで深みのある歌声で心を鷲掴みにされた。
加齢とともに少し高音域が出なくなったのは感じられるが、そんなことはもはやどうでもよくて、完璧なプロフェッショナルなステージだったのだ。
この日、アメリカでは全州において『同性婚』が認められるという歴史的な判決がくだされた。いつもゲイの味方だったベット・ミドラーは、このニュースにも触れ、みんなから大喝采を浴びていたし、僕たちの前には、二人の大げさな格好をしたドラァグクィーンが喜びをあらわに絶叫していた。
最後に、彼女の曲の中でも最も好きな曲が連続で演奏された。その曲は、自分の人生で出会い、ともに生き、今はもう居なくなってしまった人たちに捧げられていた。
彼女の語りと歌声を聴きながら、抑えることの出来ない涙がとめどなく流れた。
それは、悲しみではなく、途方もない喪失感だった。
そして、そんなことを全部知っているかのように、ベット・ミドラーはそっと触れ、僕を温かく包みこんだのだった。

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