OUT IN JAPAN

久しぶりに「OUT IN JAPAN」の展示が表参道のX8Galleryで始まった。

「OUT IN JAPAN」とは、LGBTQ +カミングアウト・フォト・プロジェクト。2000人以上のセクシュアルマイノリティを写真家のレスリー・キーさんと一緒に今まで撮影してきたプロジェクトだ。

今回、TRPの会期に合わせて開催された展示会だけど、このTRPに合わせてさまざまな著名人も来日するようで、急遽僕も東京に行くことになった。

あまりにも急な予定変更になってしまったため、友人のゲストの最後の1泊に一緒にいることができなくなってしまったのだけど、事情をお話ししてご了承を得た。

久しぶりの東京、楽しみのような、宮古島が心配のような、複雑な気持ちでいる。

Kとお母さん。

お父さんが手術になり、急遽九州の実家に帰っているKからLINEが来た。

K「お母さんがKちゃんが帰ってることおじさんとかに隠そうとするから、ちょっとうんざりしちゃった」

僕「なんで隠そうとするの?」

K「沖縄に移住してることとか言ってないし、ゲイということを知ってほしくないんだと思う」

僕「淋しいね」

K「一回嘘つくとまた嘘を重ねるようになるよって言っちゃった」

僕「うん。結局お母さんであっても時間がかかるんだよね。うちの親もきっといまだにただしくんのことかわいそうとか恥ずかしいとか、他の人より劣っていると思っていると思う」

K「Kちゃんは職場で大変だったよと言ったら、そしたらそれは自分のことでしょ?って言ってた」

僕「うちの母もきっと親戚には恥ずかしいと思っていて言ってないけど、従兄弟とかは気づいて向こうから言ってきたりしてる」

僕「お母さんも少しずつ変わっていくよ。Kちゃんが今必要以上に怒ったり傷ついたりしなくていいからね。お母さんはお母さんのペースがあるから」

僕「でも、一番近い親がそう思っているのはつらいよね…今まで色々なところで自分を隠したり、傷ついてきたのにね」

K「うん、だって自分の存在を否定されてるようなもんだもん」

僕たちは、たとえ親にカミングアウトをして受け入れられたように思っても、親が本当の意味で僕たちの存在をあるがままに受け入れることが出来るのは、ずっと時間がかかるのだと思う。うちはもう難しいと思っている。

こんな風に日本のあらゆるところで、同じような悲しいことが無数に起きているのだと思う。

その大きな原因は、法律で平等が認められていないからだ。

この国のセクシュアルマイノリティに対する差別意識は、国の差別意識を国民が反映し続けていることの表れに他ならないのだ。

Kのお父さんの手術。

今朝7時頃Kから、「今、病院についた」というLINEが入った。

Kの実家から大分市の病院まではかなり時間がかかったと思う。今日のお父さんの手術は予定だと8時半からで14時まで、およそ5時間半かかるということだった。

14時を過ぎて連絡がなく、そのうち連絡があるだろうと思いこちらからはLINEを送らなかった。

16時半になり、もう終わっているだろうと思いLINEを送るも、まだ終わっていないとのこと。

なんだか不安になり夕方何を食べようかと考えていたところ、18時頃に「さっき終わった」と連絡が入った。お父さんは無事だったようだ。

僕はほっと胸を撫で下ろし、お母さんもさぞかし心配だっただろうと考えた。

僕の夕飯は、昼ごはんにお肉を食べ過ぎたのであっさりとひじきのパスタにした。ひじきはKのお母さんが送ってくれたひじき。それに、山椒の実をアクセントで加えて納豆を別に添えた。

Kは家に帰る途中にお母さんとスシローに入ったようだった。スシローのお寿司は「普通」とだけLINEが送られてきた。

お兄さんもお姉さんも、仕事があるから手術には立ち会えなかった中で、Kがお母さんのそばにずっと寄り添っていられたことはとてもよかったと思う。

僕は海や太陽と時々話しながら、手術がうまくいったことを海と太陽と喜んだ。

僕たちはたとえ結婚していなくても、お互いのご両親のことをとても大切に思っている。その気持ちに男女とか男同士女同士など何も差異はないと思っている。

家族なのだ。

訴訟から4年、国会議員への手紙。

我らが「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、2019年2月14日の提訴から4年が過ぎた。

そこで、全国の原告が国会議員の皆様に読んでいただくべく手紙を書いた。

自民党議員や秘書官から相変わらず定期的に差別的な発言が繰り返されているけど、僕たちにできることは諦めずに声を上げ続けること。

いつか結婚の自由をつかむまで、これからも声を上げ続けていきます。

名前: 廣橋 正
年齢: 54歳
職業: 自営業
訴訟地域: 東京
在住地域: 沖縄県

名前: かつ
年齢: 38歳
職業: 自営業
訴訟地域: 東京
在住地域: 沖縄県

〈以下、本文〉

2022年の日本のLGBTQ +10代若者の調査では、48%が自殺に思いめぐらせたことがあると回答し、14%が過去1年間に自殺未遂をしたと回答しています。

いじめられ、差別され、友人にも家族にも誰にも相談できずにいるセクシュアルマイノリティがこの国には沢山います。

セクシュアルマイノリティや同性婚に関する社会の理解は自治体などの協力によりすでに進んでいます。「LGBT理解増進法」は自民党内にのみ必要なものです。この国に本当に必要なものは「LGBT差別禁止法」です。

我が国の伝統的な家族観よりも、この国の若者の生命の方が比べようもなく大切です。政治に関わる仕事であるならば、どうかこの国の若者の生命を守ってください。

日本の人口は約1億2500万人います。

この中の恐らく数百万人から1000万人くらいの人たちは、この国では好きな人と結婚して家族になることが出来ません。結婚に付帯する1500以上ある社会保障さえ受けられずに暮らしています。

これは明らかな人権侵害です。

日本国憲法の第14条には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と書かれています。

本来ならば、人が自分の好きな人と結婚する権利は、誰か他の人が反対したり、認めなかったりするものではないと思います。

「あなたたちの結婚は見るのも嫌だから認めない」などと、誰が他の人に言う権利があるのでしょうか?そんなことを言える人は、当事者を、自分たちよりも劣っている存在のように考えている差別主義者でしかありません。

我々が生きている2023年の世界では、同性を好きになることは病気ではありません。変態ではありません。

それは、性的指向の一つであって、生まれ持った性別や人種と同じように自らコントロールできるものではないのです。

好きになる人、結婚したい人が同性であったとして、それがなぜ結婚が認められない理由になるのでしょうか?

自分以外の他の人が同性と結婚したとしたら、我が国の家族観にどう影響するのでしょうか?

社会はどう変わってしまうのでしょうか?

具体的に教えてほしいです。同性愛が社会で伝染するとでもお思いなのでしょうか?人が結婚する権利を、雰囲気や好き嫌いで判断しないでください。

戸籍上同性との結婚を認めた日本以外のG7の他の国々で、いったいどんな風に社会が変わったのかご存知でしょうか?

それとも日本だけ特別に社会が変わってしまう何か仕組みがあるのでしょうか?

僕たちは、「同性婚」という制度が欲しいわけではありません。

自分の愛する人と結婚して家族になり、この国で他のカップルと同じようにささやかな毎日をふたりで分かち合いたい。ただそれだけなのです。

バイデン大統領への手紙。

荒井秘書官の差別発言を聞いて、僕なりに何かできないかと考えて、G7の首脳に手紙を書くことにした。

誰から書こうかと考えていたところ、マリフォー(marriage for all Japan)のメンバーから、アメリカから特使が来日する話を聞いて、急ぎバイデン大統領に宛てて手紙を書いた。

翻訳をする時間もなくまずは日本語の手紙を送り、同時に会社時代の同僚に翻訳を頼む。

夕方に翻訳も出来上がり少し手直しして送る。

その手紙は無事にエマニュエル駐日米国大使の手に渡り、そのまま特使であるEnvoy Sternさんに手渡された。

Sternさんはバイデン大統領のメアドは直接は知らないようだけど、知っている人を知っているとのことで、あとはこの手紙がバイデン大統領に届くのを祈るばかり。

荒井秘書官の差別発言。

岸田首相の首相秘書官である荒井勝喜が、3日夜、首相の同性婚に関する答弁を受けた形で、記者団にオフレコで「僕だって(同性婚の人を)見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と話した。また、「同性婚を導入したら国を捨てる人もいると思う」と述べた。

この差別発言は瞬く間にSNSで拡散され、Twitterでは大荒れになった。

僕が最初に思ったことは、この発言を若いセクシュアルマイノリティの人たちが聞いたら、どんなに傷つくことだろう?

ということだった。若い当事者だけではなくその家族も深く傷つくに違いない。

そんなことをグルグルと頭の中で考え続けているうちに、なんとかしなければと思っていた。

差別をする人に声を上げても結局のところ事態は何も変わらないのかもしれない。今までの日本ならば、どうせ僕たちは差別され続けて来た存在なのだからしょうがないと黙っていたに違いない。

それでも今回沢山の人が声をあげて、この発言はおかしい!と立ち上がったことで、その動きはうねりとなり、国際社会にも目に見える形で浮かび上がった。

それが何よりもうれしくて、この国に微かな希望を感じている。

レインボーツーリズム

昨夜一緒に食事をした人が講師をすると言うので、「レインボーツーリズム」と言う沖縄の観光業におけるLGBTQプラスの話を聞きに行った。

ずっと前からよく言われていることは、子どものいないゲイなどは可処分所得が多く、旅行にかける金額も多いと言うこと。ビアンの場合ははっきりとしたデータになりづらいと言うことでデータはないらしいのは、ストレートの女性同士でも旅行に行く人は多いからだと思う。

これは日本に限った話ではなくて、世界の潮流でも旅行業界はLGBTQ+を意識しているとのこと。

僕たちの宿も、LGBTQ +が安心して泊まれるような宿にするつもり。

特にLGBTQ+フレンドリーなどの表記は使わずに、レインボーフラッグとWELCOME!の表示だけでいいのかと思っている。

google mapにもレインボーフラッグを記載することができるとのことなのでそうするつもり。

公正証書

海を美容室に預けて、太陽は病院に預けて、午前中の便で那覇に飛んだ。

以前から進めていた公正証書の取得のために、空港からレンタカーを借りて那覇公証センターに向かう。

マンションの一室にある公証センターの中に通されて一通りの手順を聞く。やがて証人の2人が到着して挨拶が交わされた。

証人には今回の僕の遺言の文章を確認してもらう。

その後、行政書士が部屋に入ってきて僕に幾つか質問をする。「あなたはこれから何をなさりたいのですか?」

「自分のパートナーに遺産を相続させるために公正証書を作りたいのです」

そんなやりとりがあった後、承認に確認が入り、承認が頷くと印鑑を押す作業がはじまる。

僕の印鑑と証人2人の印鑑、その後行政書士は外に出て行き終了。少し時間が経ったのちに公正証書をいただいた。

これによって、僕に万が一のことがあった時にKに遺産を相続刺せることができるようになったのだ。

それにしてもこの手続きの面倒くささとお金をかけて公正証書を作らなければ今の日本ではお互いを守ることができないことを考えるとつくづく腹が立つのだ。

僕たちは明らかな差別の中でヲレを当たり前のように受け入れながら暮らしている。

こんな不平等、絶対に何とかしなければと固く心に誓ったのだった。

公正証書。

ずっと進まずにいた公正証書の件が、ここへ来て進展を見せ始めた。

結局宮古島の公証役場ではなく那覇にある公証センターで証人を立ててもらって手続きをすることになった。

年明けに那覇に行きそこで手続きをすれば、僕に何かあった時にもKに遺産を遺すことが出来るようになるのだ。

なぜ僕たちだけこのような面倒な手続きとお金が必要なのか納得がいかないのだけど、この差別をバネにしてこれからも裁判を闘っていこうと思う。

裁判は、控訴審へ。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、東京地裁判決が先日終わり、高等裁判所に控訴することが決まった。

今まで僕たちは「原告」だったのだけど、これからはそれに伴い「控訴人」となるそうだ。

人生で原告や控訴人になるなんて考えてもいなかった。

東京地裁で出した沢山の資料を元に審議されるものらしいが、高裁というのは地裁の判断が間違っていないかどうかを中心に進められるらしい。

14条の「法の下の平等」に反しているし、24条の「婚姻の自由」がないことも違反しているではないか。

人権の最後の砦である裁判所に、どうかきちんとした判断をしてもらいたいものだ。