トラブル。

水曜日から日曜日まで、4泊5日で九州を縦断していたのだけど、心配していた台風の被害に遭うことはなく、天候に恵まれ続けた旅程だったのだけど、最後に僕たちとランチを食べて別れた後に、彼らにトラブルが起こった。
タクシーに彼らの荷物を乗せて別れたのだけど、彼らはそのまま残り2泊を過ごすべくレンタカーで阿蘇に向かった。僕は旅行が無事に終わった安堵感に包まれつつ、台風の影響で飛行機が乱れ、結局夜の11時に羽田空港に到着した。飛行機を降りてスマホを見ると、数件の電話とLINEが入っていた。
「Lの荷物の中のパソコンとiPadがない。きっと、ランチの時にレストランに荷物を預けたので、その時に何者かに盗まれたに違いない。レストランに電話して、盗難防止のカメラがあるか聞いてくれ。」とのこと。
JとLは僕に連絡がつかなかったため、日本人の友人のSに既に電話をしていて、Sからホテルとレストランに電話を入れてもらい、どちらにもそのような忘れ物は無いということまでわかっていた。僕は取り急ぎレストランに電話をして、くどいようだけど忘れ物がないか問い合わせたが、さすがにパソコンを誰かが盗んだとも言えず、電話を切った。
僕が、なくなったパソコンとiPadの行方について考えられることは、
1.彼らがパッキングする前にどこかに置き忘れた。
2.大きな荷物をホテルに残して来たので、その中に一緒に入れてしまった。
3.レストランで荷物の置き場が悪く、何者かによって盗まれた。
なのだけど、僕は、3のレストランはほぼ可能性がないと思った。高級レストランで預けた荷物が盗まれるなんてことは、今後の営業にも致命的になるからだ。それでもJとLは、レストランしか可能性がないと言い張っていて、盗難カメラを調べてくれと言っていた。僕はSと話して、ひとまず明日もう一度レストランとホテルに電話をかけてみると言って、家路についた。
出社をして、空いた時間にホテルに電話をかけてみた。グランドハイアットの電話に出た人は忘れ物係に繋ごうとたのだけど、僕は5階のクラブラウンジのコンシェルジェをお願いした。しばらくして僕たちの滞在を知っているコンシェルジェが出てことの次第を告げた。すると、チェックして折り返すと言い、しばらくして電話がかかって来た。
コンシェルジェ「LさまのラップトップとiPadは、私どもが12日のお帰りまでお預かりすると言うことになっておりますが・・・」
僕「え?ええ??えええ??? そ、そちらに彼らは預けて行ったのですか?そちらに本当にあるのですね?」
コンシェルジェ「はい。左様でございます」
急いで彼らに電話するも繋がらないので、LINEで事の次第を告げると、
「thank you!!!」 「almost didn’t sleep yesterday」
と返事が返って来た。(信じられない!!!!!)
その後、シンガポールの女王様はこうおっしゃいました。
「Super Queen, thanks so much!
Restores our faith that Japan’s honesty culture is not spoiled by foreign workers working here!」
そして、楽しそうに白ワインをホテルの庭で飲んでいる写真が送られてきた…。

『すし、太郎。』そして、『華蓮』。

ハモのチーズ和え

唐津のウニ

黒豚と黒牛

★すし、太郎。http://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400106/40035401/
福岡には土曜日に合わせるように入った。それはもちろん、土曜日の福岡のゲイバーが楽しいからだ。
今回の5日間に及ぶシンガポールカップルとの旅行、最後の晩餐は『すし、太郎。』と決めていた。この寿司屋さんは前回に引き続き再訪なのだけど、思っていた通りミシュランの一つ星を獲得した店。
前回は、若い大将と奥さんのふたりでの接客だったのだけど、今回は一人、お弟子さんがいて、18種類あるという日本酒にやたら詳しいゲイだった。
大将は、前回も書いたのだけど、スペインで数年間働いていた変わった経歴を持っている。クラシックな寿司が好きな人は、きっと驚くと思うけど、淡白なハモにチーズを削りかけたり、鯵にオリーブオイルをかけて出して来たりする。
それでいて握りはしっかりとして食べ応えがあり、その時期の食材をうまく取り入れていて満足させてくれる。全部お任せで食べて、1万円という驚きのコスパもありがたい。
あえて、新しいお寿司に挑戦し続ける大将を、僕は応援している。
★華蓮http://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400102/40000807/
最後の日曜日の昼は、鹿児島の有名店『華蓮』の博多店へ。ここは、地元の人が推薦するJAが経営するしゃぶしゃぶ店。黒豚黒牛、どれも美味しく、サービスも行き届き、店内もモダンでおしゃれだ。
美しい黒豚と黒牛が運ばれてくると、シンガポール人のJとLから歓声が上がった。彼らをはじめ、香港の友人も、台湾の友人も、みな日本の牛や豚が異常なほど好きなのはどうしてなのだろうか?
お寿司にしろ、しゃぶしゃぶにしろ、シンガポールで食べたら4倍はすると彼らは言う。それならば、大好きな日本に来て、本場の料理を食べた方がよっぽど美味しくお得なのだと。
最後のしめの豚骨ラーメンまで食べ尽くして、うれしそうに手を振りながらタクシーを見送った。

山みず木。

熊本には、黒川温泉という素晴らしい温泉がある。
この温泉の良さは、ちょっと車でも面倒な場所にあるがゆえに、美しい山の自然が残っていて、人も少ないということだろう。
そして、一番いい点は、英語で言うところのリーズナブルであることだろう。
今回、『山みず木』という、黒川温泉近辺では評判の宿にしたのだけど、これが素晴らしかったのだ。
一番評価出来る点は、露天風呂の豪快な広さと開放感、川の隣にあって山の樹々が借景となる美しさだろう。
その次に、食事の美味しさがあげられる。夕食も朝食も、この宿ならではの趣向を凝らした料理は、料理長がこの場所を愛しているのが伝わってくるのだ。
風が樹々を揺らし、蝉が鳴いている。山はやさしく僕たちを包み込み、川は清冽に流れ続けている。
黒川温泉を去る時にはいつも、今度はいつ、ここへ戻って来ることができるだろうか…と思うくらい、どうやらこの場所に魅せられてしまったようだ。
★山みず木http://www.yamamizuki.com

『あぢもり』と『ごん兵衛』。

あぢもりの黒豚しゃぶしゃぶ

ごん兵衛の13種類具が入った湯豆腐

焼酎

黒豚しゃぶしゃぶ発祥の店という『あぢもり』は、鹿児島の地元の人には評価が分かれるようだけど、僕は思いのほか楽しむことが出来た。
他のしゃぶしゃぶ店と違っているところは、ポン酢や胡麻ダレなどのタレがいっさい無いこと。
スープに微妙な味がついているだけなので、さっぱりとしていて豚肉が持つ甘さを感じることが出来る。
「スープは何が入っているんですか?」と訪ねたら、
「企業秘密だから、私たちにも教えてもらえないんですよ…」という答えが返って来て笑ってしまった。
『華蓮』『寿庵』『吾愛人』もいいけど、『あぢもり』は、この鹿児島にしかない黒豚の食べ方を体験出来る素晴らしい店だ。
★あぢもりhttp://s.tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46000029/
前回の鹿児島旅行で感動して、必ず再訪したいと思っていた『湯豆腐 ごん兵衛』へ。
『ごん兵衛』は、100年近い老舗の湯豆腐屋さん。せっかちな大将は店の中にいて、元気なおばちゃんふたりがこの字型のカウンターで串焼きを焼いたり相手をしてくれる。
キビナゴ、黒豚、牛タン、鰻の肝、ウズラ、銀杏、ガンツ(トビウオ)…どれも美味しくて顔がほころんでしまう。
お酒は焼酎と言えば、勝手に熱くした焼酎が波並みとグラスに注がれる。
湯豆腐は、13種類の具が入っていて何度食べても食べ飽きないのは、この店秘伝のぽん酢の美味しさにあるのだと思う。
何度来ても美味しくて、どこか懐かしくて、食べ終わる頃には、また鹿児島に来たら、必ず来たいと思っている…。
僕にとっては、鹿児島で絶対に外せない素晴らしいお店。
★湯豆腐 ごん兵衛http://s.tabelog.com/kagoshima/A4601/A460101/46003724/

吹上浜。

どんどん台風は鹿児島に近づいて来るようだけど、速度が時速15キロで雨風が強くなる気配はない。
朝から日本三大砂丘と言われる吹上浜を目指した。
途中、雲が増えて、雨がぱらついてきて一瞬LとJの顔に不安がよぎったけど、山を越えて日本海側に着く頃には、驚くほどの晴天になり、人のまったくいない浜辺に辿り着いた。
吹上浜は、海に沿った車道がない。浜に出るには、海から離れた駐車場に車を停めて、10分以上歩かなければならない。
人の気配がまったくなくて、実際に北朝鮮に拉致された人がかなりいると言われている浜。
ビーチでビールを飲みながら、今年初めて身体中に日焼け止めを塗って、のんびりと波の音を聞きながら四人で色々な話をした。
空には綺麗な雲が浮かんでいて、太陽はいつまでも僕たちを照らし続けていた。
遠浅な海は驚くほど澄んでいて、小さな魚が素早く泳ぎ去って行く。
今年もこうしてKと一緒に、美しい海に来ることが出来たことを感謝した。

台風の来る鹿児島へ。

巨大な台風11号がまっすぐ九州に北上してくる中、僕たちの九州旅行始まった。
シンガポールからの友人カップルL&Jたちからは、何度も何度もメールが来ていた。
「ただし…台風が来てるのに、本当に九州に行って大丈夫なのか?」
「後半の湯布院へ向かう旅程は変更して、僕たちは福岡に留まっていた方がいいのではないか…?」
シンガポールでは地震も無ければ、台風もないという。
火山列島の上に形作られた日本は、毎年毎年地震は繰り返し起こるし、暖流と寒流が混じり合う日本には、台風が必ずやってくる。
さすがに僕も、ずっと雨の中ホテルにいるのもどうかなと思い、天気予報をチェックし続けるも、台風の進路は変わりやすく、数日後さえも予想出来ずに出発の日がやって来た。
3時過ぎに鹿児島に到着する飛行機を降りると、LとJの大きな笑顔が待っていた。
機上から眺める鹿児島の雄大な景色に、すっかり魅せられたようだ。
レンタカーを運転しながら桜島を眺めていると、彼らは写真を撮りながら、喜びで胸がいっぱいだと言った。
旅の始まりの鹿児島の空は、まるで
神様が祝福してくれているように8日ぶりの快晴だったのだ。

大塚隆史 レトロスペクティブ

僕の大学(多摩美)の先輩であり、僕のお母さんであり、タックス・ノットのマスターであるタックさんの個展が、『irodori』の上の『MoCA』で始まり、オープニングパーティーに顔を出した。
今回は、アーティストであるタックの今までの作品を、時代を追って様々に集めた回顧展でもあり、タックの半生を現しているような個展となった。
タックはとても頭のいい人だ。それでいて、自分の表現したいという欲望が湧いた時には、恐れずにまっすぐに表現へと向かってゆく。その時代その時代ごとにタックが関心を持ち、表現しようとしてきたものは違っているし、ひとつひとつの作品にきちんと理由があるのがわかる。
特に圧巻なのは、入り口と2階の壁を飾る立体のオブジェたちだろう。タックの作品を置いただけで、その場所がとたんに不思議なファンタジーの世界に変わっているのだ。
平面のペインティングから、写真とペイントを組み合わせたもの、半立体、立体、繊維を複雑に編み込んだもの、芝居、陰毛を箱に閉じ込めたもの・・・文字ではとても説明することができないので、6週間ある会期中に、ぜひ脚を運んでいただきたい。
★大塚隆史 レトロスペクティブhttps://www.facebook.com/events/1451739858424283/?ref_newsfeed_story_type=regular

シンガポールの友人カップル。

ピューターのコップをいただいた。

LとJは、シンガポール人のおしどり夫夫。今年、Lは1年間休暇を取って、世界中を旅行している。1年間ですよ!1年間!!!
先週は北海道に行っていて、火曜日に東京に入るはずのふたりが、予定を変更して一日早く東京にやって来た。水曜日からLJカップルとともに、僕とKも夏休みを取り、九州を縦断することになっている。
このところ九州は連続して台風に見舞われていて、僕たちの旅程に合わせるかのように、台風がやってくるようで心配ではあるものの、一緒にご飯をたべようということでS太郎を呼び出して4人で表参道の『鳥政』へ。
彼らふたりを見ていると、本当に仲睦まじくて、「こんな風に愛し合っているカップルってうらやましいなあ・・・」と思わざるをえない。ホテルではじめて出会ったふたりは、お互いに「運命の人だ!」と思ったそうだ・・・。
旅行に行く時はいつも、最小限の鞄にふたりで洋服を入れて、とっかえひっかえで同じ服を着るそうだ。20歳近く年の離れたふたりは、自然と役回りも決まっていて、ほとんど喧嘩など無縁のようだ。
おしどり夫夫との九州旅行、僕とKもいろいろと学ぶことが沢山ありそうです・・・。
★鳥政http://tabelog.com/tokyo/A1306/A130602/13001258/
表参道にある老舗。感動するほど感じの良い名物女将さんが着物で接客してくれる。

トイレの壁。

ITALIA!

果物籠を持つ少年

トイレで思索の時間に耽ったのは、なにもヘミングウェイだけではないだろう。
本こそ置かないものの、僕の家のトイレの壁には、イタリアの地図と、イタリアの絵画を集めたカレンダーを貼ってある。イタリアの地図を眺めながら、なかなか行けない故郷に思いを馳せる。
8月は、イタリアバロック期の巨匠カラヴァッジョの『果物籠を持つ少年』だ。ローマのボルゲーゼ美術館所蔵のこの作品を、僕は何度か観たことがあるけど、カレンダーの複製とはいえ、こうして家でじっくりと絵画を眺めることができるというのは、僕にとってたいせつな時間でもある。
若い頃の自画像とされるこの絵画は、ナルシスティックであり、官能的でもある。
ぶどうの葉の隅々までじっくりと描かれたこの作品を何度も観ながら、400年以上前のイタリアのことを夢想する。

サンシャイン 歌声が響く街

スコットランドからミュージカル映画がやって来た。マンマ・ミーアのようだという評だったので、あまり期待せずに出かけたら、ほんわかとかわいい作品だった。
スコットランドの片田舎リースで暮らすロブとジーンは、間も無く結婚25年を迎えようとしている。
兵役を終えた長男とその友人がやっと戻って来て、家族に幸せが訪れるかのように見えたが、ロブの25年前のある出来事が発覚して家族がバラバラになりはじめる…。
ロブ役のピーター・ミュラン、ジーン役のジェーン・ホロックスがともに素晴らしい熱演だ。映画全体として、美男美女がほとんど見当たらないのに、それぞれ個性派の演技力によってよりリアリティのある人物に仕立てあげられている。
見終わった後に、温かい気持ちに包まれて、80年代の懐かしい曲、i’m gonna be (500 miles)を口ずさみたくなる映画だ。
★サンシャイン 歌声が響く街http://sunshine.gaga.ne.jp/