好きなものを追いかける人。

Tは、仙台出身で、早稲田大学を卒業した後、大手証券会社に入り、三年の後に証券会社を辞めて、スポーツクラブのインストラクターになった。
中学生のようにまっすぐな瞳で、口元にご飯粒でもついているのに、気づかすに大きく笑っているような、どこか純朴な人柄。
証券会社は、給料は良かったけど、ある時、給料をいくらもらってもどこか満たされず、自分はこの世界では一番にはなれないと気づいて、大好きなスポーツの世界に転職をした。
スポーツクラブでは、いつでも変わらぬ元気な笑顔でみんなの人気者だけど、しばらく働いた後、このままここにいるだけでいいのかと思い始めていたようだ。
今日、久しぶりに会ったTは、僕に会うなり、「五月にアメリカに行きます」と宣言した。
一週間お休みをいただいて、フロリダのスポーツ施設や現場を見て、二年後にアメリカにスポーツインストラクター留学したいという計画を話してくれた。
好きなものに向かって、挑戦をしている人は、美しい。やりたいことに対してがむしゃらだったり、無鉄砲な人が、僕は好きだ。
26歳という若さと、彼の情熱があれば、きっと、どんなことだって出来る。そんな彼を見ていて、ちょっと嫉妬してしまった。
いくつになっても、諦めたり、守りに入らずに、自分の好きなものを追いかけ、好奇心旺盛でいたい。
Tの真剣な眼差しを見ながら、そう思った。

旅行の前に。

明日から旅行に行く母から電話があった。「明日、飛行機に乗るから。B787ではないんだけど…」
先日、全日空のボーイング787が発熱のため高松空港に緊急着陸する事故があった。その後、世界中で787の運航を見合わせている。
母は、飛行機に乗る時や旅行に行く前には、必ず僕に電話をして来る。
僕は、「お母さん、実際に、飛行機による死亡事故は、車による事故とは比べられないほど少ないから、安心して」と話した。
昔は僕も、必ず海外に行く時は、母に電話をかけていた。母は僕が学生の時から遠出の前には僕にそうさせていたし、安否を気遣っていたのだろう。今は、あまりにも頻繁に海外に行くし、かえって心配させてしまうと思って、長期で行く時以外は知らせないようにしている。
旅に出る時や、帰って来た時に、電話をかける人がいるというのは、自分が気遣い、気遣われている人がいるということ。
この地球上において、親であれ、パートナーであれ、友人であれ、自分が気遣い、気遣われ、愛し、愛されている人がいるということは、それだけで何て温かく、幸福なことだろうか。

こころ

今日のように、まだ雪が道に残り、空気が冷蔵庫の中のように冷たく、薄陽もささない冬の日は、心も、息を殺すように静かになる。
今、目の前にある問題を考えながら、一歩一歩踏みしめるように雪の道を歩いていたら、急に空から光が射し込んで来た。
光に照らされながら、遠くに覗く青空を見上げたら、抱えている問題も、きっとどうにかなるに違いないと思えて、心が急に軽くなった。
傷ついたり、震えたり、弾んだり、萎んだり、膨らんだり…人の心は、周りの出来事に、なんて影響されやすく、変化しやすいのだろうか。
そして、最近よく思うことは、身辺でたとえ不幸な出来事が起こったとしても、出来事は、ただそこにあるだけで、実は世界は変わっていないということだ。
その出来事を、どう捉えるかによって、その人の世界が変わってしまうということ。
本当は、僕たちの周りで何があろうとも、太陽はきちんと変わらずに僕たちを照らし続け、世界は変わらずにそこにあるのだ。
心はいつも、湖面のように、風や雨によってさざ波立ってしまうけど、それを分かっているのなら、何があろうとも、いつも、心は満たされて、幸せであればいい。
[写真 : プリムラ・ジュリアン。雪道を歩いていたら、ほぼ毎日覗くお花屋さんFUGAhttp://www.fuga-tokyo.com/で、小さな花に出会った。おばあちゃんみたいなシックな花は、英国で特に親しまれている]

I’m not old I’m experienced

アンチエイジングの仕事がやって来た……でも、なんで俺に??!(笑)
30代後半の頃は、睡眠時間が無かろうが、若い人なんかには負けないぞ!と思っていたけど、今はもう、すっかり居直っている…
生きていれば、傷もつくし、シワも出来る。少しずつ、昔とは変わってくるさまざまな身体機能の反応に、おっ…こう来たか!と、ひとまず受け入れて、様子を見たりする余裕もある。
そして何よりも、苦労をして自分が手に入れて所有しているものよりも、色々と身体で経験してきたことの方が、カタチは無いのかもしれないけれど、確かなもののように感じられるから不思議だ。
「I’m not old I’m experienced」
ノートの表紙のタイトルを見た時に、笑って即買いしてしまった。イメージとしては、年老いたゲイが、キラキラしている若造に向かってピシャリ!と答えている感じですかね…おおこわ。

氏神様

家のそばの熊野神社には、元旦から何度かお参りをしましたが、ふと思いついて、会社の周りの神社を調べたら、小さな神社を見つけたのでお参りに行きました。
震災以後、なかなか日本の経済が良くならないせいか、仕事も伸び悩んでいて、新しい仕事を獲得するための挑戦が続いています。
人間の身体のサイクルもそうですが、仕事の流れにも、自分の人生の波のようなものが、僕たちには調整出来ないところであるような気がしていて、何か自分よりも大きなものに、手を合わせて祈るということは、人間が昔からやって来たことなのかもしれません。
そのお参りのお陰か、バタバタと新しい仕事が入って来て、ちょっと昨年の静けさとは違った年の初めになりました。
ありがとうございますという日頃の感謝と、今年は仕事で、社会、そして世界に、もっと貢献していけますようにという願いを…

スタッフ

今日は一日中スタジオにこもっていました。賞を取るための撮影だったので、この仕事そのもので利益を産むものでは無いのですが、なんの損得も考えずに必死にサポートしてくれるスタッフの姿に、頭が下がりました。
なんというか、高校の頃の文化祭の出し物をみんなで作っている感じでした。
僕の日々の暮らしは、様々な人に支えられながらあるのだと、改めて思い知らされた一日でした。
[写真 : 大晦日に買った水仙。玄関に置いていたのですが、未だに慎ましい香りを放っています]

88歳のお母様

寒いので、手編みの手袋を。

Mカップルにいただいた誕生日のお祝い

今日は、親しい友人Mのお母さんが大阪から上京されたので、
久しぶりにMカップルと四人で食事をしました。
場所は、数ある外苑前のイタリアンの中で、
一番好きな「EMILIA」http://www.ciao-emilia.com/
お母さんは、88歳。
最近は、ご高齢ということもあり、週に何回かデイサービスに来てもらい、
身の回りの世話をしていただいているとのことでした。
昨年は、白内障の手術をされたり、散歩の途中で転んで左腕を折ったり、
日常の生活が更に大変な毎日だったようです。
お母さんは話すことがお好きで、植物の話、食べ物の話など
尽きることはありません。最近では、いかに様々なことに、
心から感謝が出来るかということばかり考えていらっしゃるようでした。
エミリアの料理も気に入っていただけたようで、お皿にパンをすりつけて、
美味しいと言ってワインを飲んでいらっしゃいました。
腕も治ったら、今度は台湾に遊びに行きましょう!と話して別れました。
また暖かくなって桜が咲く頃に、お元気なお顔を見せてくださいね。お母さん。

72歳の挑戦

朝から伊勢丹で、お寿司と福砂屋のカステラを買って、
子どものいない叔母の家に、年始の挨拶に行きました。
叔母は、一昨年に叔父を、
昨年に祖母(叔母の母親)を亡くしてから、
しばらく何もしない日々が続きましたが、
最近になって、パソコン、英会話、ボランティアなど、
少しずつ活動範囲を拡げています。
今日は、僕のiPhoneに興味津々で、
夕方二人でiPad miniを買いに行きました。
子どものように好奇心旺盛な叔母を見ていると、
好きであることとか、ワクワクする気持ちが、
その人の生命に力を与えているのがわかります。
72歳になっても、新しいことにチャレンジ出来たらいいなあと、
横にいる叔母を見ながら思いました。