家の雨戸と雨戸の間至る所にすずめが巣を作っているようだった。
かわいそうとは思うものの、このまますずめの巣にしておくことも出来ず、思い切って雨戸を引き出して外に立てかけた。
すると、中からは小さな卵がまだ孵化しないまま出て来たり、中には一羽産まれて数日たったもののまだ毛の生えそろわないすずめの雛が現れた。
僕たちはペンキ塗りをやっているところで、このまま炎天下に置いておくのもかわいそうだったので、2階の雨戸の横に雨風が凌げる窪みがあったのでそこに巣とぴーちゃんと名付けた雛をそっと置いて来た。
その2階にはそばに大きな木があって、そこはすずめの溜まり場だったからきっとぴーちゃんに気づいてくれると思ったのだ。
ぴーちゃんはまだとても小さかったので、あのまま死んでしまっただろうな…と思っていたのだ。
あれから10日くらい経っただろうか、ペンキ塗りが進んで来た時に2階の雨戸の横の巣を思い出して見に行った。
巣には卵やぴーちゃんの影もなく、僕は安心してその巣を両手で持ち上げて2階から道路沿いの大きな木の根元に向かって投げつけた。
すると、それを見ていたKが叫んだ。
「巣から鳥が出て来た!」
「え!だってざっと見た時は何もいなかったよ」
どうやら僕が行ったからか怖くなって巣の下の方に隠れていたのかもしれない。
見ると、毛がかなり生えて来たぴーちゃんが巣のそばに出て来ていてピーピー鳴いていた。
僕たちはあの時のぴーちゃんがそのまま生きていて成長していたことに驚き、まだあまり飛べないのかもと思いもう一度元の場所に戻そうと道路の木の下の巣の場所に行ってみた。
そしてなんとかぴーちゃんを捕まえようとしたのだけど、ぴーちゃんは50cmくらいは飛べるみたいでパタパタと飛んでは逃げてしまう。
結局農道を挟んだ向かいまで追っかけたことをしてバナナの木の中にぴーちゃんは隠れて逃げてしまった。
その後も何度もバナナの根元を探したのだけどぴーちゃんは見つからず、それでも飛べるくらい大きくなっていたのでなんとか生きて行ってくれるだろうと思いぴーちゃんを探すのを諦めた。
僕たちの家の周りは幸い猫もいないので、すぐに天敵に襲われることはないかもしれない。
死んでしまったと思っていた雛が元気に育っていたことがとてもうれしかったのだった。