叔母に、ありがとうを。

今日は母のすぐ上の姉である叔母に会うために、千葉県松戸市を訪れた。

駅前で母と待ち合わせのつもりが電話がかかってきて、すでに叔母の家にいて駅前に向かっているので昼食を食べるお店に行きましょうとのこと。

叔母は84歳で若干痴呆が進んでいる。思い出せないというよりも、たった今覚えていたことを片っ端からすぐに忘れてしまうような感じだ。

今は毎日ヘルパーさんが家に来てくれていて、掃除をしたり薬を飲ませたり、身の回りの世話をしてくれている。僕の従兄弟も泊まり込みでいるようだけど、昼間は働いているので見ていることは出来ないからだ。

僕は宮古島への移住にあたり、お世話になった叔母に会っておきたいと思っていたのだ。僕が小さな時から従兄弟とは兄弟のように育ったので、毎年夏休みには熱海や伊東の温泉がある保養所に出かけていたのもこの叔母の家族と一緒だった。

お店に入る途中、叔母が立っていたので声をかけると驚いていた。「ただしくん、まだこんな小さかったのに…」と、手を自分の胸くらいにあげて笑った。叔母の心の中では僕はまだ小学生のようだった。

食事をしながら小さな頃の思い出話をする。叔母はちゃんと覚えていて懐かしそうに笑っている。でも、少し経つと話した内容は忘れてしまうようで、また同じ話を繰り返している。

店を出て、叔母が僕の腕を掴みながら少し歩いた時に、叔母に昔の話をし続けた。

「叔母さんが母にやさしくしてくれたから、僕たちちゃんと大学までいけたんだよ。ありがとうね」

「私はやさしい旦那がいたから幸せだったの…でもね…お母さんは苦労したのよ…」

「おばさん、ありがとうね。本当にありがとう」

叔母は僕の腕を握りしめながら笑っていた。

叔母は妹の母を苦しい時にいつもそばで支えてくれた人だ。自分の着る物には頓着せず、会うたびに母や僕たちにいつもお金を渡してくれた。

「ただしくん、お母さんにやさしくしてあげてね」

叔母は呆けていってしまうとしても、叔母のやさしさはいつまでも僕の心に残り、僕や母を今でも守り勇気づけてくれている。

帰り際、叔母に手を振ると、「ただしくんまた会えるわね?」とニコニコしながら僕を見送ってくれた。

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