海という奇跡。

海のお腹はほんのりピンク色で、皮はまるで一枚の薄皮のようで、その下に血や内臓があるのかと思うと怖くなるくらい柔らかい。

仰向けになった海のお腹を触りながら、海がこの壊れやすい繊細な身体で今日も生きていてくれることを奇跡のように思う。

時々全く動かなくて、寝息も感じられないような時に、眠っているのかほんとに生きているのだろうかと思い海に近づいてみることがある。

海は静かに息をして呼吸も小さく寝ていることがわかると、この小さな命が今日も生きていることをありがたく思う。

素直で、やさしくて、人も犬も大好きだから誰にでも近寄っていく疑うことを知らない海を、人間の不注意で酷い怪我を負わせてしまったことが悔しくてたまらない。

その包帯姿があまりにも辛いから、何度も抱きしめて「ごめんね。ごめんね。こんな痛い目に遭わせてしまってごめんね。海」と泣いてしまう。

海は僕の思いなどわからないだろうけど、僕の涙を一生懸命に舐めてくれる。

海は、僕にとって奇跡であり、この世界においてありえないような純粋でやさしい存在。

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