思い出すのは、父のやさしさ。

先日、新幹線に乗った時に4両目に乗ったら、3両目との間に喫煙ルームがあるようでそこはかとなくタバコの臭いがした。

その臭いを嗅いだ時にふと、「あ、父の臭いだ・・・」と思ったのだ。

そして、不器用な父を思い出した。

僕が働き出して数年した時に、大きな企業の仕事ばかりで夜中まで残業が続いた時に、肝臓の数値がおかしくなって即入院したことがある。

急性肝炎と診断されたものの結局ウイルスは発見されなかったのだけど、二週間絶対安静で入院をしたのだった。

父はそんな中、新宿の女子医大病院に毎日僕の様子を見にやってきた。

父は仕事の後や途中で来るようで、面会時間に慌てて駆け込んでくることもあったし、面会時間が終わった後にこっそりと忍び込んでくることもあった。

「お父さん、僕は大丈夫だから、そんなに毎日面会にこなくていいよ」

と僕が言うと、少し置いてから父は言った。

「お前も自分の子どもを持ったらわかるよ」

そんな言葉を僕は今でも思い出して、「自分の子どもは持つことはなかったけど、お父さんの愛情は身に染みてわかるよ」と今では思う。

70歳で逝ってしまった父に、もっとやさしくしてあげられたら良かったのにと、今となってはどうすることもできずに悔やんでばかりいる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です