「荷川取牧場」というのが物件のそばにあって、そこでは天然記念物に指定されている宮古馬を飼育している。
沖縄市や宮古島市は保護を訴えているのだけど、特別に補助金を出すわけでもなく、馬を飼う人たちには餌台も馬鹿にならず宮古馬の数は減り続けているようだ。
牧場の主の素敵な女性に会う機会があり、大田区出身の主と長い会話を交わした。
「宮古島もここ数年バブル状態で、リゾート開発の手がどんどん広がってきて危機感を覚えてるんです。沖縄本島や石垣島のようになってしまったら手遅れだから、そうならない前になんとかしないといけないと思って…」
「そうですよね…どこにでもある島になってしまったら後戻り出来ませんよね…」
「あなた、せっかく大きな会社にいたのだから、何かこの島のために協力してもらえませんか?」
「え?ああ…あの…なんでもやります!」
「じゃあ、まずはこの牧場にボランティアに来てね。朝7時半からで、夕方は4時半からなの」
「は…はい!」
熱海に帰る前の最終日、不動産屋さんに行き確認事項やスケジュールを話し合った。
その時に不動産屋さんが物件とは別の話をしはじめた。
「宮古島も田舎の島は空き家が増えてきていて、それらを何か有効活用出来ないか頭を悩ませているんです」
「やっぱり他の日本の田舎町と同じなんですね…」
「池間島はほかの島のようにリゾート開発を拒んできた島なんですが、池間島の組合のようなものがあってそこから池間島の今後のことを相談を受けてるんです。ただしさん、こんな話相談にのってもらえませんか?」
「僕でお力になれるかわかりませんが、島人とは違う視点は持っているのでアイデアは考えますよ」
それは、二人が何気なく言った話で特に僕の助けを必要としているものではないかもしれない。でも僕には2つの話は繋がっているように思えたのだ。
宮古島への移住は、僕にとって新しい人生のはじまりでもあるのだけど、この島で僕たちが出来ることはたくさんありそうだと思えたのだ。