斜向かいに救急車。

夕方に救急車のサイレンがだんだん近づいて着て、家のそばで止まった。今僕の暮らしている熱海の山の中は、圧倒的に高齢者が多く、こうやって救急車が急病人を運ぶのもそれほど珍しくない。

僕は何かあったのかな?と思い、すぐに下に降りて行くと、斜向かいの家に救急隊が入って行くのが見えた。

しばらくするとお隣のおじいさんも慌てて出て来て、その隣のおばあさんも出て来て心配そうに見守っていた。

運ばれたのは斜向かいのおじいさんで、おじいさんと言っても70歳手前くらいだろうか。とても穏やかで優しく、いつも僕たちを気にかけてくれていた人だ。

おばあさんも出て来て少し慌てているようで、自分の車で行くか、救急車に一緒に乗って行くか、迷っていた。

おばあさんは僕たちに、「ご迷惑おかけします」と言って、救急車に乗り込んだ。

どうやらおじいさんはこのところ体調が悪く、しばらく寝込んでいたらしい。どうりで会わなかったわけだ。

少し近所の人たちと立ち話をして、家に戻ったのだけど、これ、東京だったらこんな風に隣近所と会話はしないだろうな・・・と思ったのだ。

東京のマンションでは、基本的に他の家に干渉しないのが暗黙のルールになっているので、救急車が来ても、物珍しさに見にくるくらいだろう。

ここで暮らす人たちは、道を歩いていても目が合うと必ず挨拶をする。たとえ知らない人であっても。それが配達の人や、通りがかりの人であってもみんな気持ちよく挨拶を交わす。

そして、ご近所でもよく会話をする。それはさもない日常のことから、どんな花が咲いたとか、天気の話とか。

若い頃はこんな挨拶が面倒でしょうがなかったのだっけど、今の僕はこうして挨拶をすることがとても気持ちのいいことだと思えるようになった。

そして、適度に周りを思いやり、今日のような緊急時には自分にできることはないかとそれぞれが思っている。

今だって、日本の田舎町はどこでもそうなのだろうけど、こうした目に見えない周囲への気配りや思いやりは、これからの高齢化社会の中で必ず役にたつと思うのだ。

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