僕がまだ小さな頃、白いスピッツのポチが僕の乳母車を引っ張っていた写真があるし、その後小学入学時には、柴犬の八が家に来て、中学生の時にはヨークシャーテリアのトコが家に来た。
子ども心に学んだことは、「かわいい」というだけでは犬は飼ってはいけなくて、毎日毎日散歩をしなくてはいけないこと。それは雨の日や夏の暑い日にもなるべく行かなくてはいけないこと。そして、犬は病気もするし、自分の思うようには育たないこと。そして、長生きするけれども自分よりも早く亡くなること。
犬を一緒に暮らしたいと思いながらも、ずっと犬を飼わずに来たのは、そんな小さな頃からの経験があったからだと思う。ゲイである自分には親以外に家族もなく、自分のことだけを考えながら生きていく方が気楽に思えたこともあった。やがて僕にもKというパートナーができて、二人で一緒に暮らしていくうちに、自然と犬を飼ってもいいかなとようやく思い始めたのだった。
今、こうして家に海が来て、子どもの頃に味わったような気持ちとはまた違った気持ちで犬と向き合っている。
それは、「かわいい」というものではなく、この先10年以上この海を、何があっても僕たちが守ってあげなくてはいけないという強い気持ちだ。そしてそれはそれほど簡単なことではなく、少しずつ僕たちも学びながら成長していかなければならないと思っているところ。