朝、起きて北側のベランダに出た時には、青虫が12匹くらいいたのだ。
レモンの土が乾いていたので、後でお水をあげようと思いながら朝食を済ませ、Kを送り出して、南側の植物に水をあげた後、北側のベランダに移ったら、青虫は消えていた。
僕は、何かが起こったことはわかったけど、必死に青虫を探し続けた。さっきまであんなにたくましくレモンの葉を食い散らかしていた青虫は、どこにも見当たらなかった。
黒く小さな幼虫はまだ何匹かいるのだけど、4回の脱皮を繰り返した後に緑色になった幼虫が1匹もいないのだ。
Kが仕事から帰ってきて、力を落としている僕に声をかけた。
K「鳥に食べられちゃったのかね?かわいそう」
僕「葉っぱと同じ色をしてるから、見つからないかと思ったけど、鳥は思った以上に目がいいんだろうね」
K「あっちのベランダは邪魔になるバラとかがないから見つけやすかったのかも」
そう言って、Kは北側のベランダに行き、黒い小さな幼虫の乗った葉っぱを二つちぎって持ってきた。どうするのかと思ったら、南側のベランダにある斑入りのレモンの木にその葉っぱを乗せて、注意深く黒い幼虫を移そうとしていた。
晩ごはんを食べた後、Kはまたベランダに出て、「ちゃんと新しい葉っぱに移ったよ!」とうれしそうに言った。
夜、ベッドで眠る時に、ヒヨドリかスズメに食べられてしまった青虫のことを考えた。金網でも作って、守ってあげることもできたかもしれない・・・。
K「かわいそう・・・青虫」
僕「でも、これが厳しい自然の弱肉強食であり、循環の一つなのかもしれないね・・・」
こうなったら、何としてでも、幼虫を蛹にして、蝶々になるまで見守ってあげたいと思いながら眠りに落ちて言った。