空き缶を集めていたおじいさん。

木曜日は、この辺り一帯の資源ゴミの日。
朝8時頃の千駄ヶ谷の駅前で、空き缶をいくつも袋に入れて大きな手押し車を引く、白髪のおじいさんがいた。
すると、すれ違いざまに、手押し車に積んでいたいくつものビニール袋の紐がほどけて、道に散乱してしまった。
僕は、近寄って行ってビニール袋をいくつか拾い上げた。
「おじいさん、これ、どうやって縛るの?」
そんな話をしながら、おじいさんに教えてもらいながら一緒に紐を縛りなおした。
おじいさんは、朝だというのに長いことお風呂に入っていないような臭いと、お酒の匂いがして、震えるような力の入らない手で一生懸命紐を縛った。
僕はなぜか、10年以上前に亡くなった父のことを思い出した。きっと酒飲みだった父は、いつもお酒の匂いがしていたせいだろう。
「ありがとうね。ありがとうね。」
そう言って歩いていくおじいさんを見ながら、父が喜んでいるような不思議な気持ちになったのだった。

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