不思議な落し物。

今日は会社は月に一度のお休みだったので、朝、原宿駅で私用のパスモと会社用の名無しのスイカにチャージして、渋谷のジムに行こうと山手線に乗り、渋谷駅で降りたのだけど、改札の手前でスイカを探しても見つからなかった。
改札口の手前で上着のポケット、デニムのポケット、カバンの中を何度も何度も探したのだけど、原宿駅を通過したスイカだけが見当たらない。
「電車は少し混んでいたけど、一駅ですられたのだろうか…?」
「改札を抜けてポケットに入れる途中に落としたのだろうか?」
「スマホを出した時に落としたのだろうか?」
一度別のパスモで出て、それでも納得がいかず原宿駅に引き返して改札口の駅員さんに落し物のスイカが届いていないか聞いてみた。駅員さんは明治神宮前方面の改札にも聞いてくれたけどスイカの落し物はなかった。
いつもは4000円くらいしかチャージしないのに、今日に限って3000円入れたら残額と合わせて6000円弱残っていたのだ。
要するに、6000円を不注意から捨ててしまったのだった。
落胆して食材を買って家に戻り、晩ごはんを作り、午後からの仕事のために会社に向かおうと思いつつ、時間差で原宿駅に届いていないかと思いながら、遠回りだけどまた原宿駅に行って聞いてみた。
同じ駅員さんが問い合わせてくれて、やはり届いていなかった。
僕は、すぐに忘れることもできずに、6000円あれば、何ができたかを考えては、もったいないことをしたなぁ…と、日頃の自分のガサツさを反省していた。
不思議だったのは、何故だかその名前も書いていないスイカが、まだ完全になくなったような気がしなくて、僕をどこかで待っている気がしていたのだ。
一夜明けて、ジムに行こうと渋谷駅に降りた時に、頭の上の方からお告げがあったのだ。
「JRの渋谷駅に聞いてみたら?」
それは、声ではなくて、ここに行ってみたら?というイメージが伝えられた感じだったのだけど、自分の中では、「渋谷駅の落し物置き場なんて、どっか遠いところまで行かされそう…それに、名無しのスイカなんて出てくるわけないでしょ」と思っていた。
目の前の改札のすぐ横に、忘れ物と書いた紙が貼ってあって、中の駅員さんにスイカのことを詳しく伝えた。
「昨日の9時過ぎに原宿駅で、3000円チャージして、残高は5970円で、渋谷まで来たけど改札でなかったんです…でも、名前も何もないんです…」
普通に聞いたら、「そんな落し物あるわけねーだろ」と言われてもおかしくないと思いながら。
おじさんはパソコンを見て、すぐに横の引き出しからスイカを見つけ出し、「これですね」と言った。
届け出てくれた人にお礼をしたかったけど、あいにく先方の連絡先は書いてなかった。
人生には、時々不思議なことが起こる。
僕のスイカは、僕のことを渋谷駅でずっと待っていてくれたのだ。
そして、この国もまだまだ捨てたものではないと思ったのだ。

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