同性婚訴訟のあとに。3

会社の会議が終わって、廊下を歩いていたら60歳を越えてシニアで勤めているかつての上司が僕の名前を大声で呼んだ。
「どうかしましたか?」
「お前、この前テレビに出てたろ?偶然見かけたんだけど・・・あれ何?あのキャンペーン手伝ってるの?あの活動、まだやってたの?」
「あ、あれは・・・キャンペーンをやっているのではなくて、実は同性婚訴訟の裁判の原告なんです。」
「え?原告だったの?もう日本だってそんなの時間の問題だろ?」
「ええ・・・そう思っているのですが、アクションを起こさないと、この国には問題はないことになっていたので・・・」
「そうなんだ・・・へえ・・・がんばってな」
またしばらくしたら、総務課の課長が歩いてきて僕を呼び止めた。
「サンジャポに出てましたよ」
「へ?そうなんですか?見てないや」
「急にただしさんが映ったからびっくりしました」
会社で直接的にこの件で声をかけられたのは、このくらい。他の人は特に何も変わらず一緒に打ち合わせをしたり、普通の話をしている。
僕の場合は社内でも完全にバレているというのもあるからか、みんな僕がその手のことで何かやったとしても、特に何も思わないのだろう。
提訴した翌日は結構ドキドキしながら会社に行ったのだけど、意外とすぐにみんな他の人のことなんて忘れてしまうんだよなあ・・・と思ったのだ。
そんなことよりも、その後の日々で毎日思うことは、今回本当にやってよかったということ。
今までの人生の中で、『勇気』ということをこれほど思ったことはなかったな。

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