母へのカミングアウト(第三部)。

トーチソング・トリロジー

「カミングアウトで、僕が一番恐れていたことは何か?」
と今になって突き詰めて考えてみるとそれは、
『同性愛者は、”普通の人”よりも、劣っている』
と思われること、卑下されること、恥ずかしい存在だと思われることだと思う。それも、自分が愛している家族によってそう思われることは何よりもつらいことだろう。
僕の大好きな芝居であり映画の『トーチソングトリロジー』の中で(もしも観ていない人がいたら、絶対に観ることをおすすめする)、主人公でゲイのアーノルドが、お母さんと罵り合う場面がある。
お母さんはずっと変わらずアーノルドを愛してきたのだけど、女装のショーパブでショーをやっているアーノルドのことを、どこか恥ずかしい存在だと思っているのがわかる。誰よりも母親を愛してきたアーノルドは、自分の自尊心や誇りを傷つけられて、お母さんと激しい喧嘩をして家を追い出してしまうとうシーンがある。
思い出しただけで涙が出てくるくらい見事な脚本でありシーンなのだけど、僕たちゲイの胸の奥深くに届くような、何がしかの真実がそこに描かれていると思うのだ。
今回のハッキリとした僕からのゲイ宣言によって、だいたいわかっていたと言う僕の母親でさえも、そこにハッキリとした落胆を感じ取ることができた。
あの後、毎日母から電話が来るのだけど、その中には、「なんだか力が抜けちゃったわ・・・」という言葉や、「あなた、小さい時からなんでも出来たんだから、今になってそんな裁判に出なくてもいいでしょう?」とか、「あなたの会社で不利益を被ることになるのが心配なの・・・」とか、余計な心配をかけてしまったのだな・・・と思う。
でも僕は、アーノルドほど強く誇り高く生きることはできないけれども、母に自分の子どもを卑下したり、かわいそうだと思ったり、恥ずかしい存在だと感じさせることはしたくないと思う。
これは時間がかかることだと思うけど、僕自身の生き方を見せることによって、母もいつか自分の子どもに誇りを感じられるようになって欲しいと思っているのだ。
(長い『カミングアウト三部作』をお読みいただき、誠にありがとうございました)

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