夜中の兄の電話。

朝起きて、2回の着信に気づいたのだけど、兄から電話があったのは、僕たちが寝てしまった後の深夜のようだった。
夜中の電話は不吉な気がして電話をかけると、兄が出て、「長男の病院をお母さんが勧めてきたんだけど、それが精神科のようで、どうしたものかとお前に相談しようかと思って…」
仕事中で忙しそうだったので手短に電話を切り、母にかけたところ、「その件もあるみたいだけど、どうやらあの子、夫婦仲がうまくいってないみたいなのよ…もしかしたらあの子達、離婚するかもしれないわ」
兄は、父と母の会社を継いで、お嬢さまと結婚して、3人の男の子を授かった。
外から見ていると一見幸福な子どもに恵まれた家庭に見えるけれども、長男は対人恐怖症のためコンビニに買い物に行くのさえ苦手のようだし、次男は慶応に入って順風だけど、三男は中1になる前に脳腫瘍が見つかったのだった。
それだけでも気苦労は絶えないだろうに、今度は家庭の基盤とも言える夫婦仲が揺らぎはじめている。
実のところ、僕たちの周りの家庭を見回してみると、幸せそうに見える家でもなにがしかの問題や驚くような困難を抱えながら生きている人たちばかりな気がする。
ゲイである僕の家庭は、こう見えてまだ問題が少ない方なのかもしれない。
兄は夜中にきっと、僕に奥さんの愚痴を聞いて欲しかったのだろうと思う。他では見せられない弱みを、僕にならば聞いてもらえると思ったのだろう。
それにしても神様は、僕たち一人ひとりの人生に、容易には解決できない問題を置いてくださるものだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です