ベロニカとの記憶

帰ったばかりで時差ボケが治らない日曜日、新宿武蔵野館に『ベロニカとの記憶』を観に行った。
日本でもシネスイッチ銀座で上映してヒットした『めぐり逢わせのお弁当』のリテーシュ・バトラ監督の第二作目は、イギリスのブッカー賞に輝いたジュリアン・バーンズの小説「終わりの感覚」(新潮社)を映画化したもの。名優ジム・ブロードベントと、大好きなシャーロット・ランプリングが共演。
映画は、まるで小説を1ページ1ページめくってゆくように展開される。
60歳を過ぎてひとり気ままに生きているジム・ブロードベントのもとに、弁護士事務所から一通の手紙が届く。
手紙は、昔の彼女のお母さんからのもので、遺されていたものを手繰り寄せながら、忘れていた40年以上も前の記憶が少しずつ蘇りはじめる…。
なんていうことのないひとりの老人の若い頃の話かと思って観ていると、やがて推理小説のように、不思議な過去が明らかになってゆく。
過ぎてしまった過去や歴史は、事実としてそこにあるのだろうか?それとも、それを捉える人によって、過去は変幻自在に形を変えるのだろうか?
この映画は、単なる老人の過去の回想録ではない。決して美しくはない過去を手繰り寄せることによって、自分が今まで生きてきた道筋をしっかりと浮かび上がらせ、今の生活に繋いでいく。
静謐でありながら、長い小説を読み終わったような読後感のある映画。
⭐️ベロニカとの記憶http://longride.jp/veronica/

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