KYさんのセカンドライフ。その1

僕が大学生の頃から知っているKYさんは今年64歳で建築家。僕にとってはお兄さんのように親しい人だ。僕が大学生の頃からかわいがってもらっていて、はじめてイタリアに行ってイタリアの凄さを教えてくれたのもこのKYさんだったし、KYさんがその当時つき合っていた人と一緒にニューヨークに遊びに行ったこともある。
昔はよく、外苑前にあったKYさんの自宅でホームパーティーをしたものだった。
呼ばれてお家に行くと、大きな板を何枚か並べて背の低いテーブルがセッティングされていて、テーブルの上には夏ならば芭蕉の葉が敷いてあったり、秋ならば家中にイチョウの落ち葉が敷き詰めてあったり、テーブルには大きな骨董の器に入った手作りのお料理が並んでいたものだった。
そこに集まる人たちは、主に新宿2丁目のぺんぺん草の常連さんたちで、KYさんカップルの周りの友人たちで、それぞれの昔の彼氏がいたり、外国人カップルがいたり、多様な分野で活躍している人たちだった。そんな中にいて僕は一番の年下で、ぺんぺん草で生意気な口ばかりたたいていたので、いつしか周りからは『生意気ひろし』と呼ばれるようになっていた。
その後、KYさんは千駄ヶ谷に引っ越してしまい、KYさんカップルの周りの友人たちも少しずつ千駄ヶ谷近辺に移り住むようになり、一時期はそのファミリーを千駄ヶ谷婦人会と言って、時々その婦人会の集まりがKYさんの家でグラマラスに繰り広げられたりしていた。
僕は僕でMとつきあいはじめて、Mが婦人会の集まりを嫌っていたので(途中からファミリーに入るのは敷居が高かったのだと思う)、僕も婦人会に顔を出さなくなってしまった。その後KYさんもパートナーと分かれて自由奔放になったり、僕も10年続いたMとの関係も終わったり、ファミリーの中で離れて行ってしまった人やまた新しくパートナーを見つけた人など、長い時間が流れる中でそれぞれが別々の人生を歩きはじめていた。
先日、ぺんぺん草でふいにKYさんと一緒になったので、今度久しぶりにランチをしませんか?と誘ってみた。KYさんにきちんとKのことも紹介したいと思っていたのだ。
建築家としてもバリバリ素敵な仕事をしていたKYさんも今や64歳。9歳若い恋人はいるものの、これからの人生、どうやって生きてゆこうと思っているのか、48歳の僕としてもゲイの老後のことがとても気になっていたからだ。   <つづく>
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