自分の会社でカミングアウト その3

自分の会社で、『OUT IN JAPAN』の展示が始まり、写真と実名、コメント入りで大々的にカミングアウトをして、会期はあと1週間となった月曜日、またほんの少しドキドキしながら会社に向かった。
お昼頃、パソコンに向かっていると、見慣れた後輩Iがのぞいた。
I「ただしさん!(実際には僕の姓)やっと会えた!うれしいな!」
僕「久しぶりー。元気だった?」
I「元気でしたよー。ちょっと会議室入りませんか?」
Iと僕は、Iの入社以来22年間、ずっと一緒に仕事をして来た、言わば兄弟のような仲だった。Iは結婚して子どももいて、お互いにプライベートで大変な時も支え合って生きて来た。
今回の全社的なカミングアウトにあたり、真っ先に気になったのは、Iのように、家族のように支え合ってともに生きて来た仲間や先輩後輩たちのことだった。
いったい彼らは、僕に会った時にどんな反応をするのだろう?
今までと変わらずに話しかけてくれるのだろうか?
何もなかったかのように黙殺するのだろうか?
それとも、もはや近づいてはこないのではないか・・・。
会議室で話すIは、今までと何も変わらず、久しぶりに僕に会えたことをとても喜んでいた。最初から最後まで、会社の玄関の展示の話には触れることはなかったのだけど、瞳を見れば彼が僕のカミングアウトを知っているのがわかった。
そして午後、社内のホールで、LGBTに関するトークショーが繰り広げられた。レスリーも会社に来ることになっていたので、僕も前の方の席に座り、トークショーの終わりにレスリーを見送りにホールの外に出たその時、先ほど話したIが、たった今ホールでトークショーを聞いていて終わったとたんにホールの外に出て来た。
Iは僕を見つけると、僕に向かってとてもうれしそうに手をふったのだ。
恐らく僕のいないところで、Iは仲間たちと一緒に僕の話をしているに違いない。そこでは、おもしろおかしく僕のことを笑い者にしている人や、気持ち悪いと思っている人もいるのかもしれない。でも少なくともIは、僕の前では事実を受け止めてくれ、今まで通りに接しようと心がけてくれていた。
カミングアウトは、自分から声を上げたら、それで終わるものではない。
僕のカミングアウトを、その人がどうやって受け止めるのか。
拒むのか。
時間をかけてその気持ちが変容してゆくのか・・・。
自分の会社でのカミングアウトは、まだまだこれから先の道のりがあったのだった。
カテゴリーLGBT

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