フクギ並木のおじい。

シークワーサーがけ海ぶどう

フクギ並木のおじい

僕たちのビーチ

美ら海水族館の先に、それはそれは美しいエメラルドビーチという白浜のビーチがある。
エメラルドビーチはシュノーケリングが禁止されているので、そのずっと先にある人気のない浜で泳ごうかと、車を停めてKとふたりで浜辺を歩いていた。
すると、どこか上の方から声が聞こえてきた。見上げると、フクギの間から、仙人かと思うような真っ黒なおじいさんが目だけギラギラ光ってこちらを見ていた。
おじいさん「そこの海は最高だよ。お兄さん、どっから来たの?」
僕「東京です!」
おじいさん「江ノ島の海は、ここと同じくらい綺麗らしいね」
僕「いやあ…おじいさんだったら、足を浸けないと思いますよ」
おじいさん「その木の木陰に荷物を置いて泳ぐといいよ。その前に、ちょっとこっちに上がっておいで!」
おじいさんに誘われるままに上に上がると、俺についておいでと言わんばかりにおじいさんは、先に立って歩き始めた。
おじいさん「ほら見てごらん。この並木のお陰でここはこんなに涼しいだろう?どう?」
そう言いながらフクギ並木の小道を歩いた。フクギ並木は木陰を作り、日向に比べるとずっと温度が低く涼しい風が吹いていた。
おじいさんに着いて行くと、おじいさんの平屋があった。おじいさん家には大きなシークワーサーがあって、小さなシークワーサーがたわわになっていた。
おじいさんは、どこかから貝殻に入れた海ぶどうを持ってきて、シークワーサーを枝から掴んで取り、包丁で割り、海ぶどうに絞りかけた。
おじいさん「食べてみて」
僕「なにこれ!うまい!」
K「おいしいね」
シークワーサーを食べると、おじいさんは自分の家を案内し始めた。そこには、もずくが沢山あったり、綺麗な貝殻が沢山置いてあった。
その後、また後で来るからとおじいさんに告げて僕たちは海へ向かった。
途中おじいさんがやってきては、これから子どもたちを引き網漁に連れていくからね。などと言って、子どもたちが沢山集まっている方に行ってしまった。
僕たちは、何度も何度も海に潜り、サンゴ礁の周りに小さな美しい魚を見つけてはじっくりと眺めた。大きなナマコを拾い上げたり、ハリセンボンを見つけたりした。
おじいさんは、何度も僕たちのところにやってきては、海の話をした。
向こうの岩場に行くともっと沢山魚がいるとか、昔一度サンゴが全滅してしまったことがあるとか…。
真っ黒なおじいさんに、この島から出たことはあるのかと聞いてみた。仙人のような出で立ちからして、この村にずっと住んでいるかもしれないと思ったのだ。
おじいさん「大阪に2年勤務して、サウジアラビアで2年半くらい働いたことがあるさー
あそこは50度くらいあったよ…」
僕「そんなとこに行ってたんですね…」
おじいさんは駄洒落を連発して僕たちを笑わせる。僕たちが笑うと、おじいさんはもっと笑って僕たちを突っついてきた。
散々海で遊んだ後、帰り際におじいさんの家を覗くと、今度は若い白人と日本人のカップルふたりを僕たちのように椅子に座らせて、おじいさんは海ぶどうを振舞っていた。
もしかしたらおじいさんにしてみたら、もずくでも海ぶどうでもお客さんに買って欲しいのかもしれないけど、おじいさんを見ていると、知らない人を家に招き入れては、その人たちと話して笑っているだけで満ち足りていて、とても幸せそうに見えた。
僕たちが帰ることを告げると、おじいさんは、
「明日もまたおいで!明日は向こうの岩場に、船で連れて行ってあげるから。明日もおいでね!」
そう言って僕たちに手を振った。
おじいさんは、昼の遊び時間が終わって、夕方になって友だちと別れる時の小学生のような寂しそうな顔をしていた。
沖縄のおじいは、人懐こくて、穏やかで、やさしい。
こんな人に会うたびに、沖縄の偉大さを思うのだ。
おじいさん、また来るからね。
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