いちじく。

ベランダに、小さないちじくの木が2本、対になってある。僕はなぜか、対のものが好きで、同じものをふたつ買い求めてしまうことがよくあるのだ。
育てってみてわかったのだけど、このいちじくという木は、新芽の美しさからはじまり、手のひらのように美しい葉を広げる姿、人知れずいつのまにか小さな実を結んでいるところと、一年を通じてその愛らしさにことかかないのだ。
2本のいちじくは、スペースがないので小さめの鉢にちょっこりと植わっているのだけど、ふと窓の外を眺める時に、古代より人々に愛されて来た姿を見ることができる。その美しい葉を見ていると、自分がまるで中世の貴族にでもなったかのような、穏やかで豊かな気分になるものだ。窓の外にはアルノ川でも流れているような・・・
洗濯物を干しているKが、突然僕を呼んだ。
「ねえ!ただしくん!
いちじくの実が熟して来た・・・食べられるかな?」
Kは美しい葉のことなど考えもせず、いちじくが食べられそうなことに嬉々となっていた。

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