都会に暮らす小さな獣。

20年くらいこの外苑前近辺で暮らしていて、知らなかったことがある。
先日、夕方にKとふたりで買い物をして家に帰る途中、民家の並ぶ細い通りを歩いていた時に、ほんの5メートルくらい先を小さな動物が道を横切って行って家と家の間の草むらに消えた。
驚いたのは、それが、大きなネズミでもなく、猫でもなかったからだ。
その動物には、長い尻尾があったのだけど、その尻尾は、猫のように細くはなく、長くて違うカタチをしていたのだ。
「なに今の? イタチ? たぬき?・・・?」
Kも僕もはじめて見たことのない動物を、何者か断定することが出来なかった。
家に帰って、ネットで調べるうちに、それは、イタチでもたぬきでもなく、『ハクビシン』という動物だということがわかって来た。
ハクビシンは、たぬきに似ているけれども、電線の上を歩くことも出来るようだ。
どうやらハクビシンは、この東京の真ん中でも様々な地域で目撃されていて、その後、周りの人に聞いたところ、赤坂の氷川神社にもいるとか、四谷駅などでも、駅のホームから見える下の草むらのところに沢山いるらしい。
アライグマであれば外来種なので、在来種を脅かすということですぐに捕獲しなくてはいけないようなのだけど、ハクビシンは、在来種とも外来種ともされていないようで、結果的に東京中で大量に増殖しているのではないかと言われている。
野生の動物だからと言って、特別獰猛とは書かれていないのだけれども、犬や猫と同じように、身の危険を感じたら、じぶんの間を守るために獰猛になることはあるのかもしれない。
明治神宮前に、外苑の森、青山墓地、代々木公園、赤坂御所…緑の多いこの地域であれば、こんな小さな獣がいてもおかしくはないのだけど、長く住んでいてはじめて目撃して、ちょっと驚いたのだ。
人間はいつも、まるで自分たちの世界で暮らす動物のように思ってしまうけど、ハクビシンからしたらきっと、彼らの世界で暮らす人間であるに過ぎないのだろう。

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