枕元に立つ男。

ぐっすり寝ていたら、夜中に急にKが叫んだ。
K「ただしくん!誰かそこに立ってた!」
僕「え?誰もいないよ。
夢でも見たんじゃないの?」
K「夢かもしれないけど、ただしくんと同じパジャマ着てたからただしくんだと思ったんだけど、顔が見えなくて、隣を見たらただしくんが寝てたから…こわかった…」
僕「僕がついてるから大丈夫だよ…さあ、もう寝ようね…」
朝方目覚めて、昨日の夢はなんだったのかとふたりで話し合った。
僕が心当たりがあるとすると、僕が10年間つきあっていた昔の恋人Mのことだ。Mは一昨年の春に亡くなってしまっている。
そのことを言うとKは、
「ただしくんよりも大きな人だったの…でも、顔は真っ暗で見えなかったの…」
僕はそんな話を聞いて、昨年Mの御墓参りに和歌山へ行った時に、出来れば毎年お参りに来たいと思ったことを思い出した。
今年はKの引越しが重なり、春には行けそうにないので、少しずらして和歌山に行こうと思っていた。
もし、本当にMが2年も経った後に僕の枕元に立ったとしても、僕はMの幽霊がこわいとは全然思わない。僕が一生涯をかけてつきあった人なのだ。これから先も、一生愛していることに変わりはないのだから。
もし、ただ1つだけ心残りがあるとしたら、最後に僕はMのそばで、ずっと手を握っていてあげたかったということだろうか。
もし、もう一度Mが僕にわかるような形で枕元に立つことがあったとしたら、Mをしっかりと抱きしめたいと思う。
もう一度、あの大きな身体を抱きしめることができたなら・・・。
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