心に残る仕事。

昔、尊敬する上司のコピーライターに聞いたことがある。
「1年のうちでどれくらい満足のいく仕事ができますか?」
その人はちょっと考えて、
「そうですね・・・。
1年間にひとついい仕事ができたらいいですかね・・・」と静かに答えた。
その時に僕は、
「こんなにいい仕事をしている上司でも、1年間のうちで納得のいく仕事は1本しかないのか・・・」と驚いたのを覚えている。
あれから10年くらい経っただろうか・・・。
1年間のうちに、1本もいい仕事ができない情けない年もあった。
今思うと、若い頃はどうしてもこの仕事を通したいという思いがあまりにも強過ぎて、その願いは叶わなかったことの方が多いように思う。
年を重ねてきて変わったことは、最善の努力をしたあとは、力を抜いて、なるようにしかならないと腹をくくってどこか天に任せるような気持ちで待ってみるようになった。そうすると、気づくといつの間にか思っていたことが叶うことがわかったのだ。
今年はおかげさまで、ひとつ、心に残るいい仕事が出来た。
僕たちの仕事なんて、時間が経てば消えてなくなってしまうようなものだけど、限りある人生の中で、自分で満足のいく仕事を、これからもひとつひとつ丁寧に重ねてゆこうと思っている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です