祖父と祖母。

母の両親である祖父と祖母は、当時、誰もがそうだったように見合い結婚だった。
祖父は、無口で、顔が険しく、どこか近寄りがたい人だったけど、僕たち孫には、とてもやさしい人だった。
祖母は、のほほんと過ごしてきた人で、怒ったところなど見たこともないような、ほんわりとしたやさしい人だった。
僕が祖父母に会いに行く時は、正月などを除いてそんなに多くはなかったけど、会いにいくといつもふたり一緒にいた。部屋でテレビを見ていたり、炬燵に座っていたり。
80歳を過ぎた頃だろうか、祖父が病院に入院した。
その後、毎日のようにお見舞いに行きたがっていた祖母も、過労のせいか別の病気で同じ病院の別の病棟に入院した。
暫くして、祖母の見舞いにいくと、祖母は、「爺さんに会いたい…」と言って母の前で泣いた。
そして、祖父の病室にいくと、無口でしかめ面しか見たことのない祖父が、「婆さんの顔がみたい…」と言って涙を流した。
祖父が先に逝き、数年ののち、祖母が逝ったのだけど、祖父と祖母のことを思う時、『愛』というものが、この世界にはあるのだと思うことが出来る。
そして、自分もいつか、年をとった時に、祖父や祖母のように、誰かを愛していられたらいいなあと思うのだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です