雪の轍

カンヌ映画祭で昨年パルムドールを受賞したというトルコ映画『雪の轍』は、観光地としても有名なカッパドキアの穴倉のようなホテルが舞台だった。
3時間を超える大作は、分厚くて難解な小説のページをゆっくりと読んでいくような愉しみがある。
かつて舞台俳優をしていた初老の男性は、莫大な父親の財産を受け継ぎ、ホテルを経営しながら地主として裕福に生きている。
その男には、20歳くらい年の離れた美しい妻と、離婚して出戻りの妹がいて、一緒に暮らしている。
主な登場人物は、この家族とその周りの人々であり、物語は美しいカッパドキアの景色とともに淡々と進み、登場人物たちの会話によってストーリーと彼らがどんな人間なのかがゆっくりと見えてくる…。
まるで、昔の大作映画のようなこの作品は、どんな映画なのかということを言葉で説明することが難しい。
監督は、人間や人生の様々な『対極』を丁寧に描いてゆく。そして、いいとか悪いとかの判断は加えずに、すべて観ている人がどう捉えるかに任せている。
登場人物たちは、今の生き方や自分にどこか不満を抱えながら、出口のない迷路に迷い込み、時に自分が選ばなかった人生を遠く思い返している…。
それはまるで、我々のようでもある…
★雪の轍http://bitters.co.jp/wadachi/

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