月桂樹。

古代ギリシャでは、その葉で王冠を作り、勝利と栄光のシンボルとされた月桂樹は、常緑樹でありとても丈夫な木だ。
ずっと昔から僕の家には、高さ170センチくらいでスタンダード仕立ての月桂樹の木が二本あって、小さなベランダの両脇を固めている。(パリのブティックによくあるまっすぐ一本に伸びた木の上に、まん丸に刈られた緑の葉が茂っている樹形をスタンダード仕立てという)
昨年の夏の暑さと度重なる旅行のせいで、植物への水やりが少し疎かになり、珍しく月桂樹の葉が葉焼けしてしまい、一時は枯れてしまうかもしれないと思うほど、常緑の葉が枯れてぶざまな姿でいた。
ベランダで水やりをするたびにその痛ましい姿を横目に見ながら、かわいそうな思いをさせてしまったなあ…と思っていたのだった。
それが、ゴールデンウイークが終わる頃、不意に新しい芽が見え始めた。やがて芽はいたるところから萌芽して、瞬く間に明るい緑色が木全体を覆い尽くした。
死んだかのように思えた植物が、色鮮やかに蘇る姿を見ていることは、僕にとってたとえようのない喜びだった。
間も無くしたらまた元の美しい球形を取り戻し、ベランダに美しい秩序を演出してくれるだろう。

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