Mのあしあと。2

宮島で撮影が夕方終わり、明日は八日市で仕事なので京都に泊まることにした。
8時に京都に着き、ホテルにチェックインした後に行きつけの『河久』へ。到着すると若旦那がいつものように相手をしてくれた。
若旦那「あのー、今日ただしさんがいらっしゃるとは考えていなかったのですけど、実はMさんのことをさっきふと思い出していたんです…」(Mさんとは、僕が10年間つきあった後、昨年亡くなった昔の僕の恋人だ)
僕「そうなの?どんなこと?」
若旦那「前にMさん、カウンターに一人で座られて、お隣に白人のお二人の女性観光客が座られたんです。お二人は、大原に行きたいけど、どうやって行ったらいいのかわからないので行き方をMさんに尋ねて、Mさん、一生懸命英語で伝えていたんです」
僕「大原って、遠いし観光客にはちょっと行きづらいところだよね…それで?」
若旦那「そしたらその後、Mさんが、俺が連れて行ってやる!と言って、結局その外国人二人をタクシーに乗せて、大原まで連れて行って案内されたんです…Mさん、ほんとにやさしい人でした…」
僕は、若旦那を見ていたのだけど、ふいに涙が溢れ出た。Mは、こんな話に事欠かないくらい、お節介でお人好しだったのだ。
人は、亡くなった後にも、いたるところにその人が生きていた証を遺す。
誰よりもやさしかったMを愛して、僕は本当に幸せだったと思う。
Mはどこか遠くから、僕に彼のやさしさを思い出させ、僕を温め、勇気づけてくれている。
カテゴリーgay

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です