ありもしないものを、探しにいこう。

昔、Jは飛鳥のクルーズに乗って、3人で洋上セミナーの講師をしていた。Jの他には、AとB。
船上で3人の講師は仲良くなり、船旅の途中、香港に立ち寄ることになった。そこで3人は、お世話になった女性Xに香港で贈り物をしようと思い、Xに「一番好きな花はなんですか?」と聞いたところ、その女性は、「たんぽぽ」と答えたそうだ。
3人は、「なんとかたんぽぽを探して、Xにプレゼントしたい」と思ったのだけど、香港には50回以上行っているBは、「香港ではたんぽぽは見たことも聞いたこともないし、どこを探したってたんぽぽなんか咲いていないよ。そんなの探しても無駄だから、俺は船に残る」と言った。
そこでJは、「ちょっと待ってください。たんぽぽはないかもしれないけど、僕は探しに行ってみます」と言った。そしてAもそれに従った。ふたりは、ありもしないと言われているものを探す旅に出たのだ。
JとAは、香港の混み入った町中を、たんぽぽを探すために下ばかり見ながら歩き回ったそうだ。およそ観光では行かないような汚い路地の奥の方とか、誰も歩かない細い道とか・・・
歩けけども歩けども、たんぽぽらしきものはBの言っていた通り見つからず、ふたりは途中で話して計画を変更することにした。「たんぽぽの絵柄のブラウスとか、Tシャツとか、ブローチとか、イヤリングならあるかもしれない・・・」
ふたりは今度は町中の店と言う店を歩き回り、聞き回った。「たんぽぽの柄のものはありますか?」
陽も傾きかかり、ふたりはついに思い至った。「香港には、おそらくたんぽぽの柄のものはどんなものであれないだろう・・・」と。
肩を落とし、ふたりが船の方に歩きはじめた時に大きなホテルが目に入った。そこでふたりは、なんとなく回り道をしてあっちを歩いてみよう・・・と思い、道を外れてホテルの方に歩いて行ったそうだ。
角を曲がると、道ばたに、たんぽぽが咲いていた。
そのたんぽぽは、あろうことか、船のすぐそばに咲いていたのだ。
もし、たんぽぽを探しに行かなかったら、JとAは、『たんぽぽを探さなければわからない香港を知ることはなかった』し、『たんぽぽを探していないとわからないショッピングを体験できなかった』のだ。
そして何よりもその旅行で、JとAはふたりで『会社を立ち上げる決心をした』
どんな会社にするのか、いったい何で収益を上げていくのかもわからなかったのだけれども、『ありもしないものを探しにいく』ようなふたりには、なんの怖れも不安もなかったそうだ。
やがてふたりの会社は、大きな成功をなしとげることになる。
聖書に何十回となく繰り返し出てくる言葉がある。
『探せば、見いだす』
※このストーリーは、僕が参加したセミナーで講師から聞いた話を、僕が記憶の限りに書き出したものです<つづく>

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