16才違いの男同士?

ご夫婦でやっているお寿司屋さんの大将は、カウンターに着くなり僕に名刺を差し出した。そして、流れから僕も名刺をお渡しすることに。
大将は僕の名刺を見て、「オタクの会社の方はお世話になっております。福岡の会社も、東京の会社も」と言った後、Kに、「同じ会社の方ですか?」と聞いた。
Kは、慌てて「いえ、違うんです」と答えると、「ではどんなお仕事を?」と聞かれ、「大分の病院で働いてます」と答えたのだけど、大将にしてみたら東京と大分に別々に住んでいて仕事も全く違う男同士二人(しかも年齢が16も違う)が、なぜ一緒に寿司屋に来ているのか、どうしても気になっていたようだ。
美味しいお寿司が滞りなく終わって、デザートになった時に僕は洗面所に立った。帰ってくるとKが微妙な顔をしていて僕のスマホのLINEを見ろと合図した。LINEにはKから、「ただしくん、僕の従兄弟で、お父さんが本家に婿養子に来たことにした」と書いてある…???
どうやら僕のいない間に、「お二人はいったいどういうご関係なんですか?」と、大将はまた斬り込んで来たらしい。きっとずっと気になっていたのだろう。
そしてKは、「僕たち、従兄弟同士なんです」と答えたそうだ。
そしたら大将は、「でも、なんで姓がちがうんですか?」と聞いたそうだ。(するどい!)
Kはそこで、「ただしさんのお父さんが婿養子に来たんです」と、即答したらしい…。
事の次第をなかなか呑み込めない僕は、それをLINEで読んで、なんだかとても複雑な関係の二人を演じなければならなくなったと思い、ちょっと笑ってしまった。
会計を済ませて外に出た後でKは、「ただしくんがトイレに立った隙に、絶対に僕に大将がふたりの関係を聞いてくると思ってたの…だから、ただしくんをトイレに行かせたくなかったけど、必死で考えてあったから大丈夫」と言った。
僕は、「何も僕のお父さんを、本家に婿養子にしなくてもよかったんじゃない?」と言うと、「でもそれが一番いいかと思って…その後離婚したことにしたから…」「え?離婚までさせちゃったの?」と聞く僕に、Kは笑って「うん」と言った。
僕たちのようなゲイのカップルは、レストランなどで時々こんな状況に晒されることがある。お店側は悪気がある訳ではなく、親しみを感じているからお客さんに聞いているだけなのだけど、初めて入った店で、他のお客さんもカウンターで静かにお寿司を食べているのに、
「僕たち実は、恋人同士なんです!」などといきなりカミングアウトするのも憚られる。
僕はこんな状況を、今回は面白いと思って聞いていたのだけど、保守的なKにしたら、かなりビクビクしていたようだ。
「今度どこかで何を聞かれてもいいように、僕たちの筋書きを決めてあげて!」と、僕に真剣に言った。
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