天空からの招待状

ジュディ・オングの「涙が流れた・・・」というコメントを読んで、ずっと気になっていた台湾映画『天空からの招待状』は、素晴らしいドキュメンタリー映画だった。
監督は、台湾政府の仕事で20年以上台湾の空撮を続けて来たチー・ポーリン。空から見る自分の国の変わり続けてゆく姿を目の前にして大きな決断をした。それは、自分の仕事を捨て、借金を背負い込み、スポンサーを見つけ、台湾人への警笛ともなるドキュメンタリー映画を制作すること。監督の熱意は、巨匠ホウ・シャオシェンの心を動かし、3億3500万円以上の制作費が集まった。
映画は、はじまりからとても美しい大地や川や海の映像が流れる。それは地球が自ら長い時間をかけて作り上げて来たため息の出るような芸術品のよう。音楽も素晴らしいし、原住民を尊重して描いている姿勢も温かい。そしてナレーションもおしつけがましくなく耳に入ってくる。
台湾はその昔、『formosa(麗しの島)』と呼ばれたほど美しい島だったのだ。先住民が暮らすその島に、中国本土から漢民族が逃れて来て今の台湾の礎を築いた。
やがて映像は、次第にこの島の暗部さえも同じように映し出すことになる。
先祖は、経済復興こそがこの国が幸福になる道だと信じて黙々と働き、家族を養い、生きてきた。そしてそれを引き継ぎ、苦難の道を自ら切り開いて来た道が、本当に幸福に続く道なのだろうかと、来し方をつぶさに見せつけられることになる・・・。
この映画は、台湾という小さな島国を追ったドキュメンタリーであるけれども、我々の日本を含むすべての国に向けての警笛でありメッセージに見える。
一緒に見た台湾人の友人は、「自分なんて、結局なんにも出来ない・・・」と無力感で呆然としていたのだけど、今起こっている現実を一人一人が知ることこそが意味があることなのだと思う。
血が流れるように汚染した川の映像は、見た者の胸に深く迫り、それぞれの日常生活の中で出来る様々な選択にも、影響を及ぼすに違いない。
僕は観終わって、なんだか胸が締め付けられるような痛みを覚えた。それはもしかしたら、ジュディ・オングの言っていた涙に共通する思いなのかもしれない。
★天空からの招待状http://www.tenku-movie.com

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