母の日に。

母の日か、もしくはその近辺で、毎年必ず母に会うようにしている。昨年は母の家に行ったのだけど、今年はいつも通り伊勢丹で待ち合わせてランチだった。
仕事は順調か?
歯医者にはきちんと定期的に通っているか?
健康診断の結果はどうか?…
もう45歳になる僕を、いつまでたっても子どものように心配して様々なことを聞いてくる。
僕が、「身体のどこかで癌が見つかったとしても、手術を繰り返したり、抗がん剤を飲んだりしたくないな…」と言うと、
「それでもいいけど、お母さんよりも先に死ぬことほど親不孝はないんだからね…」とたしなめる。
母も今年で73歳になる。今月末に行くクルーズを楽しみにしているのだけど、先日の韓国旅客船の沈没事故もあったことだし、いつ自分の身に何が起こるかはわからないと言う。
「例えば、夜寝たら、そのまま起きなくなってしまうかもしれないし、お風呂で亡くなることもありうるから…」
「それでも、今日はこうして、あなたの顔が見れたから、お母さんは安心したわ」と言ってケラケラ笑う。
日頃、本当に親不孝な僕は、母の誕生日と母の日くらいは…などと思って会うのだけど、今日も畑で取れた沢山の野菜と、僕の大好物の唐揚げを朝から揚げて紙袋いっぱいにして持って来た母のことを思うと胸が熱くなる。
「前のあなたの家で育てていたバラが見事に咲いたから切って持って来たわ。きれいでしょう…」
摘んで来たポールズ・ヒマラヤン・ムスクという美しい原種に近いピンク色のバラを僕に見せながら笑う母に、「母の日は、お母さんに感謝する日なんだけどな…」と思ったけど、口に出すことが出来なかった。

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