雪の日に聴く音楽。

東京は先週に引き続き、大雪の週末を迎えた。外苑の樹々は雪化粧に覆われ、まるで北欧かどこか別の国に来てしまったように美しい。
雪がしんしんと降る日には、部屋で無音で過ごすのが一番だろう。雪の降る静けさ、その非日常こそが贅沢だと思えるから。でもあえて音楽を聴くとすると、どんな音楽を聴こうか?
僕は今日、バッハを選んだ。
パブロ・カザルスのこのアルバムは、僕がまだ大学生の頃に出会った。ニューヨークが好きで何度も行っている時に、年末の寒い日に、ふと地下鉄の乗り換えで歩いている時に、無心でチェロを弾くお爺さんがいた。
上手いとか下手とかではなく、一心不乱に弾くバッハを聴きながら僕は彼の演奏に魅了されて、この人はいったいどんな人生を送ってきたのだろうか…?と考えた。
その後、何度か同じ乗り換えでその道を通ったけど、そのお爺さんには二度と会うことは無かった。
ニューヨーク滞在中(その頃はよく3週間くらい滞在していた)に、お爺さんが弾いていたバッハの曲を聴きたくなり、ニューヨークのヴィレッジの辺りのCDショップでこのアルバムを買い求めた。カザルスを選んでくれたのは、眼鏡をかけた髪の長い怪しいお兄ちゃんだった。(カザルスは、『私の生まれ故郷カタルーニャの鳥は、PEACE、PEACEと鳴くのです』という言葉を遺して、『鳥の歌』を国連で演奏したことも有名)
降りしきる雪には、バッハが似合う。
ニューヨークのSOHOのカーストアイアンの建築物にも、バッハが似合う。

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