一緒に生きて、年をとること。

週末に観た『ビフォア・サンライズ、サンセット、ミッドナイト』という3本の映画のおかげで、今日はそれらの映画の余韻から、抜け出せずに過ごした。
この映画で、僕が一番心動かされたことは、ふたりが奇跡的な出会いをした後、9年が流れたこと。そして、さらにまた9年が流れたこと。
ふたりとも、はじめに出会った頃の面影は残るものの、イーサン・ホークは、目つきも変わり険しくなり、身体も小さくなり、眉間に深い縦じわが刻み込まれていた。無邪気であどけなかった微笑みは、年をとった男の微笑みに変わってしまった。
ジュリー・デルピーは、目が窪み小さくなり、髪の量が少なくなり、下半身に見事に肉がついて、フランスのおばちゃんになっていた。輝くような笑顔はそこにはもうなくて、慈しみ深いような笑顔になっている。
ミッドナイトの映画の中で、ジュリー・デルピーが何度もイーサン・ホークに尋ねることがある。
『今、年をとった今の私にはじめて列車で出会ったとしても、あの時と同じようにあなたは私を誘ってくれる?』
ふたりは、あれから想像を絶するほどの月日が流れてしまったことを知っている。
自分も、目の前の恋人も年をとり、若い頃のような美しさはなくなり、毛が薄くなり、シワが出来て、太り、醜くなってしまったのを知っている…。
そしてここには、人と長くつきあったことがある人にはわかる秘密がある。
昨日書いたことだけど、『つきあいはじめた頃の、お互いを何よりもたいせつに思っていた頃を思い出すことが出来ること』。
もう一つは、『楽しい時も、たいへんな時にも、ふたりで一緒に生きてきた膨大な時間があるということを知っていること』。
ふたりで一緒に生きてきた長い時間と経験は、お互いに対する愛おしさになってゆく。
CGでは作れない、実際に18年が経過したふたりが見せるやり取りが、過ぎて来た時間を想像させて、胸に迫り、涙を流さずにはいられなかった。

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