ぺんぺん草の夜。

日曜日の芝居で、ぺんぺん草のマスターのひろしさんは、女優を引退すると宣言していたので、それを僕はなんともせつなく感じていた。芝居も終わって目標がなくなって真っ白になっているだろうか…?と思い、ぺんぺん草に会いに行ってみた。
「もう女優、ほんとにやめちゃうの?」と聞く僕に、「お前もねえ、この年になったらいずれわかるよ」と言う。
僕が、「台詞なんて、ほとんど無い役をやればいいじゃん!」と言うと、「バカだね…台詞だけじゃなくて、身体もついていかないんだよ…」と、あくまでもケラケラ笑いながら。
それから昔話をして笑ったのだけど、はじめて和物をやった時は、和物の衣装やカツラを買うお金が足りないから、衣装やカツラを全員分揃えることが出来ないので、結局脚本を、衣装が盗まれたことにしたこと…
はじめて浅草の舞台用のカツラの店に、和物の女もののカツラを買いに行った時に、ひろしさんがお店の人に、「あのー、カツラが欲しいんですけど…」と言うと、黙って奥の薄汚い部屋に通されて、「こちらです」と言われて見たら、綺麗に七三分けしてあったりする男用の普通のカツラが、埃を被って沢山置いてある部屋に通されたのだとか…
そんな昔のくだらない話をしながら、僕のちょっとせつなかった気持ちも、笑いの力ですっかり元気になってしまったのでした。
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