金沢の友。

福井の銘酒『黒龍』の『石田屋』

実は、僕が毎年金沢に行くのには、理由がある。
3年前のこの時期に、ひとりで久しぶりに金沢に旅行をした際に、『あいじ』という片町にある寿司屋さんにタクシーで向かったのだけど、雨の中、変な場所に降ろされて、道に迷い電話をしながらやっと店のドアを開けると、「こっちこっち!」と手招きされ、そのまま若旦那のようなHさんの隣に座った。
たまたま同世代ということもあり、金沢の話、食の話、東京の話、イタリアの話、次から次へと話は尽きず、Hさんは日本酒協会の会員ということもあり、ふたりで珍しい日本酒を飲みながら夜中までお寿司をいただいた。
それ以来、月に何度かメールをいただきながら、東日本大震災の時には直ぐにメールが来て、東京で起こっているコンビニの買い占めを心配されて、必要なものがあればすぐに金沢から送りますなどと、やさしい心遣いをいただいた。
Hさんとのやり取りは、月に何度かそのまま続き、その翌年の同じ時期に金沢に再訪。『あいじ』で待ち合わせ、Hさんは珍しい日本酒をいくつか持ち込み、僕に次々に美味しい日本酒を振舞った。
その後、何か美味しいものを食べた時にメールをし合ったり、Hさんが京都に旅行する時には、京都の店を紹介したり、軽井沢に旅行する時には、軽井沢の美味しい店を紹介したり、絶えることなく続いた。
そんなこんなで今年でもう4回目。金沢行きが決まると、真っ先にHさんに連絡をする。Hさんは僕が来るのを本当に楽しみにしているのがわかる。
今回も、『こいで』に行った後、もっと一緒に飲みに行こう!と大騒ぎだったのだけど、仕事の後に飛行機で来た僕は少し疲れていたこともあり、今日は帰りますと言って別れたのだけど、タクシーに乗る時に見たHさんは本当に寂しそうな顔をしていた。
大人になって、なんの利害もなく、ゲイではなくて、こんな風に友達になることなどあるのだろうか?
Hさんは娘さんがいるけど、もしかしたらゲイなのかもしれないと思うこともある。それにしても、なんで見ず知らずの僕に、こんなに親切にしてくれるのだろうか?お寿司屋さんのお金もなんで全部払ってしまうのだろうか?
別れ際、『黒龍』の限定酒『石田屋』をいただいた。
先ほど帰って来てネットで調べたら、10500円もしていた。僕も、生ハムやローストビーフ、チーズやワインなんかを、その年ごとに考えてお土産を持参するのだけど、なんだかいつも、もらってばかりのような気がする。
金曜の夕方に小松空港に着いた時に、HさんからLINEでメッセージがあった。
「おかえりなさい」
帰りの飛行機に乗る時にそれを思い出し、また今度はいつ金沢に帰って来られるかな…と、温かい気持ちを抱えたまま、東京に帰って来た。

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