すき焼き。

子どもの頃、家でごちそうと言えば、すき焼きだった。
僕は甘い醤油味があまり好きではなくて、いつも母に、「僕のだけは甘くしないで!」などと言って母を困らせていた。(すき焼きって、一つの鍋で同じ味になるではないですか)
それが大人になって、更にすき焼きが好きになった。
すき焼きは、海外でも広く知れ渡り、天ぷらや寿司と並ぶ日本を代表する料理であろう。(ちなみに天ぷらは、僕は大人になるまでそんなに美味しいものだとは思えなかったのだけど、大人になって初めて天ぷら屋さんでいただいた時に、今までの自分の考えが鮮やかに変わった)
関東のすき焼きと関西のすき焼きは全然違う。
関西のすき焼きは、脂を敷いた鍋で肉を入れるやいなや、肉に直接砂糖を振りかけ、焼きながら酒や醤油も少量肉にかける。それ故に、強烈に甘い。牛肉好きな京都のすき焼きなんかは、甘すぎて胸焼けするようだ。
関東のすき焼きは、牛脂を鍋に溶いたら、肉を入れて日を通しながらすぐに少量の割り下をかける感じ。ある程度肉を食べたら、野菜や豆腐や白滝も入れて、割り下で煮る感じで食べてゆく。
香港から友人カップルが遊びに来たので、久しぶりに『よしはし』に行った。
ここは、1年に1回か2回は訪れるすき焼きの店。
赤坂御所の隣、元赤坂1丁目にあり、ほとんど接待で使われるような店だ。上質な肉60グラムずつ3枚180グラムが1人分なのだけど、1枚が相当大きいので、いつもおかわりをしたいと思っても、3枚でちょうどお腹いっぱいになってしまう。そしてその1枚が、3150円という結構な値段なのだ。
ここは関東風で、お店の人が丁寧に作ってくれる。
割り下の配分を聞いたら、出汁は入れていなかった。普通、『今半』などでは、煮詰まらないように昆布出汁などが別にあるのだけど、『よしはし』はあくまでも牛のスープを使っていて海の食材は出汁に使っていなかった。
白いメレンゲのように溶いた玉子に、上質な牛肉をいただき、牛肉の旨味だけで、しいたけやネギや春菊や豆腐を味わう。最後には決まって、白滝を炒りつけるようにして炒めたものが出て来る。牛肉の味を吸い込んだ白滝は山椒の苦みとぴったりと合って顔がほころぶ。
帰る頃には、素晴らしい料理と心配りに、「頑張って仕事をして、またここにすき焼きを食べに来れたらいいな〜」と思える珍しい店だ。
★よしはし http://tabelog.com/tokyo/A1308/A130801/13010379/

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