BOULE D’AMBRE

15年近く前になるだろうか?
パリ左岸を代表するインテリアデザイナーのカトリーヌ・メミが、外苑西通りのベイリーストックマンの向かいに東京で初のショップをオープンして、日本にパリ左岸のミニマリズムを知らしめた。
(パリの補足をすると、パリは、背骨や心臓とも思われるセーヌ河を挟んで、伝統的で保守的な右岸と革新的であり芸術的な左岸に分かれている。昔から左岸には芸術家が好んで住み、イヴ・サンローランのブランド名にも、イヴ・サンローラン・リヴ・ゴーシュ(左岸)という風に、左岸であることの誇りが表してある)
彼女の作る無駄を削ぎ落とした家具や照明、リネンの類いも素敵だけど、そこで扱っていたアルチザン・パフュームのテラコッタのボールの香りに虜になってしまった。それは、今までの僕の人生で嗅いだことの無い甘く複雑な香りであり、心の奥深くに染み渡るような神秘的な香りだった。
そのAMBER BALLSとは、フランスの陶芸家によってひとつひとつテラコッタに手彫りの模様が施されたボール。中には固形香料がセラミックに染み込んでいるのだけど、そのアンバーの神秘的な香りは、古来より中国の瞑想に使われてきたという。
パリに行くたびに友達にお土産に買ってきたりしていたので(昔はよくパリに行った)、僕の家には3つ、アンバーボールが大きさ違いであって、居間やベッドサイドに置いてある。友人が訪れると、アンバーボールを手に持たせて匂いを嗅がせてその表情を見るのが好きだ。誰もがちょっと驚いて、『なにこれ?いい匂い!』と言うから。
時々眠れない夜には、ベッドサイドにあるその神秘的な香りをそっと嗅いでみることがある。甘く本能に訴えかけるような香りを嗅いでいると、高ぶる心はいつしか落ち着きを取り戻し、知らないうちに深い夢の中にゆっくりと沈んでゆく。
★L’artisan Parfumeur http://www.artisanparfumeur.jp/index.html

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