二人で生きる技術

僕のホーム・バーは、新宿2丁目に3軒あって、そのうちの一つに、『Tack’s Knot』がある(場所は正確には3丁目なのだけど)。
2週間ぶりに飲みに行くと、隣に31歳の若者と、もう一つ隣には、55歳くらいのおじさんが座っていた。
若い子とおじさんは、どうやら会社が同じだということで、若い子は、自分がゲイであることやホモフォビアで随分悩んだけど、ある日お母さんにカミングアウトをしたらしい。
お母さんは、あっさりと、「あら、そんなの気づいていたわよ」と言うことで、それから彼は少しずつカミングアウトをはじめている。その二人目が、一緒に来たおじさんで、この人ならカミングアウトをしてもいいかもと思って話したそうだ。
おじさんは、「あ、俺も知り合いにそういうのがいるよ。大塚隆史って言うんだけど…実は、俺の従兄弟なんだ」
若者「え?!大塚隆史さんなら、僕も本を読んだことがあります!親戚なんですか?」と言うことで、二人がタックス・ノットにそろって訪ねて来たらしい。
世の中には、こんな偶然ってあるんだなあ〜と、僕もあっけに取られていたのだけど、タック(大塚隆史)もびっくりしていた。親戚がまさか突然訪ねて来るなんて思わなかったから。
タックの著作に、『二人で生きる技術』という本がある。
タックの生い立ちから始まって、ゲイで悩む時期や、セックスに関して赤裸々に書かれていたり、今までのつきあった人との関係性が、しっかりと描かれている本なのだけど、僕は大好きな本で、今までに、15人以上の人にはプレゼントをして来たと思う。
日本では、男と女のカップルと違って、国に認められて結婚することはまだ出来ないし、もちろん子どもを持つことも出来ない。『男二人でつきあったとしても、なんの約束もないこの世界において、それでも二人がパートナーシップを結び、人生を分かち合ってゆくことには価値がある』ということが書かれている。
今の時代、取っ替え引っ替え色々な男を捕まえては、セックスを楽しんで生きて行くことも出来るし、実際、年をとっている人でも、そのような短期間のつきあいを繰り返して生きて来た人が多いと思う。
僕も、10年間というつきあいの後に別れた時は、もう二度と誰かとつきあうことはないだろうと思っていた。ジャックドやグラインダーでは、星の数ほど男なんているように見えるし、いい男に出会ったとしても、彼は僕とのセックスが飽きた後、また、星の数ほどいる男たちの中から次の男を探すに違いないと思えた。
それが、ひょんなことからKに出会って、またもう一度誰かと人生を分かち合うということを思い出しながら、毎日を生きはじめている。
道に迷った時には、先人の智慧が時には頼りになることがある。この、『二人で生きる技術』には、何度も繰り返し読みたくなるような叡智がぎゅっと詰まっている。
これから一人で生きてゆこうと思っている人も、誰かと人生を分かち合って生きてゆこうと思っている人も、必ず何か、生きてゆくためのヒントが、この本の中には書かれていると思う。
★二人で生きる技術 大塚隆史 著http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-7808-0135-4.html
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