夜蝉。

東京では、夜でも蝉が鳴いているのをご存知だろうか?
僕の家の周りは、神宮外苑の森に囲まれ、夏の間、昼間は甲子園の応援と蝉の大合唱が聞こえる。
今まで、あえて気にすることは無かったのだけど、昨夜、寝ようとしたところ、蝉が鳴いているのに気づいた。
どうやら蝉が何匹か廊下に迷い込み、一匹が僕の寝室の窓枠に停まって大きな音で泣きはじめた。
その音は近くで鳴かれると、騒音以外の何物でもなく、3時まで続いた後、頭に来て外に出てスリッパで蝉を追い払った。
蝉たちに罪はなく、25度以上の暑さと、夜でも灯りがこうこうと照りつける都会の夜を、昼間だと勘違いしているらしい。
3年から17年もの間、幼虫として地中で暮らし、外に出て来て羽の生えた蝉になり、およそ数週間の生命。
蝉の人生は、昔からいく度となく人間の人生と比べられ、例えられて来た。
あれほどうるさく鳴き叫ぶのも、雌への求愛の音だという。力の限り求愛して、子づくりをして、死んでゆく。
『空蝉よ 樹にしがみつき 放すまい』
これは昨年、書家の友人に歌を詠んでくれと頼まれて、詠んだ歌。
今年は、また違った視点で、蝉を思いながら過ごしている。

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