母をたずねて。

久しぶりに、母の家に行った。
僕が今のマンションに引っ越す時に、植物が置けないので、沢山の植物を、母の家に無理やり運んだこともあり、色々な花が咲くたびに、見に来いという電話はあったのだけど、なかなか予定を合わせられずにいた。
僕が小さな頃の写真を、何枚か揃えて僕に渡すように用意してあり、今は空き家になっている一軒の家も、売りに出すことを考えていると言う。
母は、71歳だけど、この頃少しずつ、自分の身辺整理を始めているような気がする。
僕の好きな唐揚げや、天ぷらや、大根の葉の煮浸しや、サラダをたっぷり用意して、帰りにも、畑で採れた沢山の野菜を僕に持たせてくれた。
梅雨に入る前のこの季節、世界は美しさに満ちている。
バラは咲き乱れ、樹々は新緑で萌え、遠くから、小学校の運動会の音が聞こえて来た。ジョギングする人も、心地よさそうで、自転車に乗る親子も、楽しそうに横を通り過ぎてゆく。
今日のような日は、そんな日常の何気ない光景が、まるでスローモーションのように感じられるから不思議だ。
遠く、僕の姿が見えなくなるまで手を降り続ける小さな母を見ながら、何度も思った。
あぁ、世界は、なんて美しいのかと。

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