宝もの。

会社で、すれ違いざまに、
入社2年目の女の子Aに呼び止められ話しかけられた。
「今週、朝からTさんが居なくて、すごく寂しかったです。
会社ががらんとしていました」
僕は、今週は撮影やクライアントへの立寄が続いて、
前半はあまり席にいなかったのだ。
いつもだと、だいたい8時半から9時には席にいるので、
うちの会社の始業時刻は9時半なので僕が周りでは一番乗り。
その後に新入社員が来る感じなのだ。
自然と、彼らと挨拶をするし、ランチに一緒に行ったり、
ネットやパソコンで分からないことを聞いたり、
最近の若者のことを聞いたり、コミュニケーションは沢山とれる。
中でも、2年目になったAは、子犬にように僕につきまとい、
映画を薦めると、すぐに迷わず観に行くし、
その感想もうれしそうに伝えてくれる。
朝、挨拶をするときも、何か話しかけても、
心から喜んでいるように、顔がきらきらと輝く。
それは、恋愛感情ではなくて、
一緒に仕事をしたり、たわいもない話をしたり、ランチに行ったり、
同じ時間を過ごすうちに、芽生えた家族的な絆のようなものだ。
僕が入社した時に、上司に言われた言葉がある。
「君は、僕たちの宝ものだから」
昔は、その言葉の意味が分からなかったけど、
会社で何年も生きているうちに、
そんな言葉をわざわざ言ってくれた上司のことを思い、
その有り難みをしみじみと感じるようになった。
忙しかったり、自分に余裕のない日でも、
彼女のまっすぐな微笑みを見ると、勇気がもらえる。
今度、一緒に飲んだ時に言ってみよう。
「Aは、僕の宝ものだよ」と。

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