山と海が出遭う。

竹の子とヤリイカの木の芽和え

父は、酒飲みだった。
何か料理を作っては、よく日本酒を飲んでいた。
ナマコ、つぶ貝、サザエ、アワビ、タコ、イカ、シャコ、エビ、鯛の子、フグ、さまざまな魚…
小さい時の僕は、不思議な海の食べ物よりも、どちらかというと肉が好きだった。
でも年をとって、父に似てきたと思うことの一つは食べもので、父が食べていたものを、今は僕が好んで食べている。
和食は、海からもらった旨味を元に、季節ごとの山の恵みを組み合わせることで、さらに味に奥行きを感じさせてくれる。
和えものは、世界に誇る日本の文化だと思う。
それぞれ別の世界に住んでいたのに、いったい誰が最初に、竹の子とイカを合わせたのだろうか?歯ごたえと味の違いを、木の芽は、懐深く結びつけてくれる。
日本酒をちびちび飲みつつ、五年前に亡くなった父のことを思い浮かべながら、晩ごはんの支度をした。
酒飲みになってしまったのも、父のせいに違いない。
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