SHAKER

シェーカーの家具に出会ったのは、僕がまだ、大学生の頃だろうか。機能を徹底的に追求して作られた形の美しさに驚き、この入れ子状に出来る箱を手に入れた。
シェーカー教徒は、19世紀のアメリカで50〜100人の共同体を作り、その中で農業と製造業に分かれ、日の出とともに目覚め、夕食までそれぞれに与えられた仕事をこなして暮らしていた。
彼らは、簡素であることだけが美徳と考えているようには、僕には思えない。彼らの作る料理を見ると、シンプルであるけれどもとても考えられてあり、厳選された素材を使いつつも、贅沢に見える。
彼らは、『生きるために働く』というよりも、『働くことが、生きること』という考えだったという。
今、シェーカーの箱は、僕のキッチンで様々な使い方がされている。小さな箱は、調味料が驚くほどぴったりと収まる。大きな箱はトマト・蟹・ツナ等の缶詰などの保存用食品。真ん中の箱は、色々な種類のお茶を。
箱という形に収めるということは、限界を設けることでもあり、調味料や缶詰やお茶が思いつきで増えて行くことを防いでくれる。この箱に入らないほどの缶詰など、使いきれずに長い間置きっ放しにするだけだし、都会で暮らす僕には、実際には必要無いのだ。
この箱が外に出ていても、様々な食品の汚いデザインのパッケージを目にすることも無く、それでいて簡単に取り出せる。ただ置いてあるだけで自分自身で美しさの秩序を保っていて、その姿を眺めるだけで、穏やかに心地よさを感じる。
シェーカー教徒のように、今の僕には暮らすことは出来ないけど、豊かさとは何か、分からなくなっている今の時代に、彼らの暮らし方や生き方を知ることは、とても興味深い。

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