ふたりで暮らすこと。3

Kのお母さんからメールが入った。
「東京に行って1ヶ月になるけど、大丈夫?何か困ったことはない?」
Kは、「元気にしてるよ。大丈夫だよ」と答えたらしい。
Kが仕事を辞めて、大分から東京に引っ越してきてから、1ヶ月が過ぎた。僕にとってもはじめてのふたり暮らしが、いったいどうなのかと聞かれると、「なんでもっと早くふたりで暮らしはじめなかったのだろう…」と思っていると答える。
僕たちの毎日は、日常のことをこなしているうちに、あっという間に過ぎて行く気がする。中でも毎日、僕の頭の中のほとんどを占めているのは、『ごはん』のこと。
朝起きては、「朝ごはんは何にしよう…」と考えながら、30分くらいで仕上げなければならないし、夕方家に帰る頃には、「今日の晩御飯は何にしよう…」と考えているのだ。
それも毎日のこと。
冷凍庫と冷蔵庫の中身をアイフォンのメモに残しておき、電車の中でメモを見ながら考える。Kは質素で倹約家なので、毎回の豪華な食事よりも、冷蔵庫の残り物などでさもない料理をすると喜んでくれるから。
料理をする時は、Kは横で僕のサポートをしてくれる。
使ったスプーンやお皿を流しに置くと、その場で洗ってくれるし、「豆腐の水切りをして」とか「万能ネギをみじん切りにして」などの細々としたことも、僕の言いつけ通りにしてくれる。
前はあまり気がつかなかったことなのだけど、Kはとても素直な性格だということがふたりで暮らしはじめてからわかった。
一度教えたことは、きっちりと言われたようにこなすし、たとえば、「大根を擦って」というと、そのままずっと擦っているような、そんな素直さなのだ。(実際には途中で、全部擦るの?と聞くと思うが)、基本的に疑うことを知らず、僕から言われたことを信じて一生懸命にやり遂げようとするのだ。
そんなKを見ていると、僕は47歳にして改めて、宝物を手にしたように思えてくる。
愛する人がいるということ自体、神様からの贈りものだ。
こんな僕に、一緒に暮らしてくれる恋人がいるということが、奇跡のように思えるのだ。

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