僕は、東京オリンピックが行われて、アスリートにとってはとても良かったと思っている。
病院で勤めているKは、病床が逼迫していることをいつも気にしていて、オリンピックの開催も最後まで懐疑的だった。
オリンピックの開会式と閉会式を見て感じたことは、演出家による企画など全く必要なかったのではないかと言うこと。今回のオリンピック自体が非常事態下でやったのだから、凝った演出や企画など何も必要ないと思ったのだ。
聖火台に火が灯ることと、世界各国のアスリートたちが手を振りながら入場してくるだけで胸に迫るものがあったと思うし、戦いを終えたアスリートたちがリラックスして歩いているだけで、その勇姿を褒め称えたいと思えた。
逆に言うと、他のすべての演出はアスリートの前では霞んで見えたのだ。
アスリートたちの戦いを見ているだけで、演劇や音楽会に行っているような感動と興奮を味わうことができた。それもそのはず、人類は何千年もの間、劇場を作っては、人間同士の戦いを観戦してきたのだから。